第5話 幻の人工大陸


 ムー大陸というのは地球時代の空想科学小説から生み出されたものである。今でも人の大きな力を感じさせてくれる「モアイ像」は、この大陸の方を向いていると言われ、一時本当にあったのではと真剣に論議されていた。しかししばらくして科学的に大陸の存在は否定され、印象的な名前だけを残した。

その後人類は地球を離れ、海がほとんど干上がったようになってからその海域を調べたが「一夜にして沈んだ古代大陸」の何かを発見したという話はない。


だが「別のもの」を発見した調査隊はあった。それは明らかに金属の人工物で、年代的にはDC2000年から3000年ごろのものと推定されている。

そして調査隊は別の「大きな金属の塊を見た」という話はあったのだが、それは数日後には秘密裡に回収されたという。

国際政府関係筋は飛行機の残骸と言ったが


「巨大だった」

「海の真ん中に飛行機が落ちたという話はない」

「これはムー計画のものじゃないのか」


これと言った社会時事が無くなると、取り上げられるようなミステリーだった。つまり、ムー大陸があったと言われていた場所に、陸ではなく巨大な人工島が作られて、そこで人々が生活していたというのである。


そしてその島はまさしく「一夜にして海に飲み込まれた」と伝えられていた。


だが結論として

「海の真ん中に島なんて作る必要は全くなかったはず」

だと多くの人は思うようになっていった。またその当時の科学技術的にも不可能とも考えられ、時々我々の話のタネにはなるが、無理な事だろうとも思われた。


しかしその島は

「あったのだ」

だとしたら想像は色々付く。そんなものを作るのであれば、本当に初期の宇宙ステーションのように、各国の協力が必要であるし、それにそうだ一夜にしてそこは沈んだのであれば


「人が・・・大勢死んでいるはずだよな」


波の力というのは凄まじいもので、船のへさきがぽっきりと折れてしまうことだってある。そして大きなものが沈むとき、その周りの海水の予測不可能な動きと渦のために、救助艇は近づくこともできなかっただろうし、悪天候であれば、空からの救出も難しかったはずだ。



「見殺しにしたのか・・・」


水にぬれたような寒気がした。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る