第4話 朗読


「どうしよう、これ、何か・・・・・」


 みんな一度手紙から目を離した。我々だって研究者だ、その当時の最高峰の受賞が「口止め料」などということなどはありえはしない。

それは長年の、食事をとることのように自然な研究の結果であって、その間きっと何度も行き詰まり、「この研究は止めた方がいい」と甘い誘惑のような箴言を振り切っての末の発見であり、発明であったはずだ。


「これ、機密に近いのかな、やっぱり」

「どうする」

皆その先が読んでみたいのは全く同じだった。だが、ここは科学的な研究機関であって、いわゆる歴史的なものを扱うところではない。そこであれば「リーディングシステム」があって読み聞かせができる装置がある。


「君は声がいい、読んでくれないか」

「僕がですか、まあ国語の朗読は上手だと褒められましたが」

「それはちょうどいい、みんなで密集して読むのは疲れるよ、お願いしよう」


その役が僕に回って来た。さてそのために僕がまずしたことは、一度飲み物を飲んで心を落ち着かせ、みんなはいつもの研究、座談用のテーブルに集まった。



「それでは行きます」


と僕は宣言し、読み始めた。




「ノーベル賞が口止め料と言ったけれど、そんなことは決してない。

君の研究、発見はこれからの宇宙時代には絶対に欠かせないものだ。

人類の、いやこの星のすべての生き物の歴史が君の力によって守られてゆくことになるのだから。もし他の星に我々と同じような生き物がいたとしたら、彼らも最初は・・・・・・・・えーっと、これは・・・何でしたっけ? 」


「何、わからない字? 」


「えーっと、「いしおの」かなあ・・・」


「そうか、おの! だ、続けます」


で、「石斧」を持って巨大な敵に立ち向かうが如しだっただろう。しかしそれが無ければ第一歩さえ、踏み出すことはできはしない。君はそのいし・・・おの・・・の作り方を、どこの石を取ってきて使い、どんな木で柄を作り、どのツル植物で巻き、ということを詳しく、漏らさず、映像を含めた情報という形で何百年も残すことができる方法を発明した、最大の功労者だ、どうか胸を張って欲しい。

君が自分を卑下するのは、君が設立した、研究を含めた色んな機関のための援助を、国際機関がやってくれることとなったためなのだろうけれど、それも当然と言えば当然のことだ。


 僕は君と幼い頃から気が合って、友としてこんなにも長く関係を保っていられることがとてもうれしいと思っている。

 でも、親しいからこそ、他の人のように君にあの「落書き島」の事を一切聞かなかった・・・・・・」


「落書き島!!!! 」

「存在したのか? 」

「ムー計画!!! 本当だったのか!!! 」


これは間違いなく最高機密だった。

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