第55話 底冷え
昨日のことだ。
単車を置いた私は冷え切った体でガレージを出た。門までの数メートルを歩こうとした時、前方から知らない女の人が犬を連れて来るのが見えた。
「影が薄いな」
なんとなくそう感じた。擦れ違い際に
「寒いですねぇ」
声が笑った。
振り返ると誰もいない。犬も。
「確かに」
呟く様に相槌だけ打っておいた。
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