第30話 夢物語はデンジャラス

「夢をもとに童話を書いてみたんだよ」


 何気なく呟いた。


 暫くしてカクヨムを見たらしい彼女は言った。


「夢を文章に書き起こすのは良くないらしいよ」

「夢と現実の区別がつかなくなって危ないんだって」

「聞いてみたけど、そう思っている人も多いみたいだから」

「あまり、夢という言葉は使わない方が良いよ」


 知らなかった。それなら世間の常識に合わせておくのが無難だな。これからは夢、夢と連呼しないようにしよう。


 その夜のことである。


 未覚醒と覚醒、あの世とこの世の狭間で無意識の意識が叫んだ。


「この夢を覚えていては危ない。人格が冒される」


 冷や汗を流していたように思う。


 幸い、起床すると夢は綺麗に消えていた。全く記憶になかったのだ。


 昨日の会話が影響したのは間違いない。だが夢の人格に自分の人格が消され、取って代わられるような感覚に襲われた。これは危険である。非常にデンジャラスだ。


 兎に角、一度、こういう経験をしてしまうと夢を書き続けることに不安を感じる。幸せな夢ばかり見られるなら問題ないのだが人間、そうも行くまい。


 よし。出来るだけ夢に頼らず実力で創ってみることにしよう。何事も前向きに捉えるのが好ましい。


 先ずは詫びておく。


 夢、夢、文字にされて不快に思われた方、誠に申し訳ありませんでした。ゴメンナサイ。


 はい。明日からは新しい物語が始まる(はず)。

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