第28話 小倉あん
「第11話 ホームベーカー」で触れた通り、私はパンを焼く。よって餡も扱う。白餡、栗餡、抹茶餡。中でもお勧めは桜餡を使った桜あんパンだ。
桜。日本の春を代表する花である。その葉をたっぷりと挽き込んだ桜色の餡。それを用いた桜あんパンは極上の季節感を運んでくる。桜餅をイメージしてもらいたい。あの香りが口いっぱいに広がるのだ。しかも殆ど市販されていない。少なくとも私は店頭で見たことがない。焼くことに価値があるパンだ。
これを読んで桜あんパンに挑戦しようと思われた方。購入されるなら、ある程度、値が張る桜餡が良い。安物の一部は桜とは名ばかりで、桜の葉を含まず色と香料で誤魔化している。その差は一口瞭然だ。
と、また脱線した。本題に入ろう。
前述のように、私は餡も幾らかは知っているつもりでいた。だが或る日、スーパーで手に取ったパンの商品名が引っ掛かった。一般的な名称だから引き合いに出しても問題あるまい。「小倉あんパン」だったか「小倉パン」だったか。兎に角、「小倉」が入っていた。
「小倉あん」ってなんだ。今まで気にしていなかったのだから忘れてしまえばいい。そう考えたが、家に帰ると検索していた。
纏めると、
こしあん 小豆と砂糖を煮て潰して裏ごししたもの
つぶあん 小豆の皮を破らないように煮て、裏ごしせず豆の形を残したもの
小倉あん こしあんに蜜で煮た大納言を加えたもの
大納言とは煮くずれし難い特徴を持つ小豆の一種らしい。そういえば小豆を買う時に売り場で大納言と書かれたものを目にする。今までブランド小豆、小豆の高級品種だろうと漠然と受け取っていたが、その性質までは把握していなかった。
というわけで、小倉あんは小倉餡であり、粒餡とも漉し餡とも違う。適当に粒々感を残したあんこじゃないの、そんな風に思っていた私は餡子より甘かった。何を今更、と、突っ込まれそうだが知識になかったのだから仕方がない。
由緒正しき小倉あん。どのように「由緒正しい」のかはお調べいただきたい。
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