第21話 フレンドリー法務局

 土地、家屋の相続、登記のため法務局に行かねばならぬ。誰からも「司法書士に任せろ」と言われたのだが、それでは面白くない。


 法務局のページを見ると「先ず説明するから予約を取れ」と。


 電話する。

「どうしてもご自身で行いたいのでしたら」

 この時点で素人お断りな感を受ける。しかし怯まない。

「明日十四時ですね」

 時間は取れた。


 翌日、取り敢えず在る書類を持ちバスに乗る。何故かこの街の支局は駅から遠い。寒風吹きすさぶ中、歩く。早足になった所為か三十分も前に着く。


 うーん、硬い表情の建物だ。入る。雰囲気が冷たい。不動産関係は二階か。階段を上がると、それなりに人影があるオフィスが見えた。左手に相談用ブースがあるようだ。


 そのパーティションに注意書きがあるので読む。

「二十分以内でお願いします」

 待て。プロによる手続きをお勧めするほどの作業だぞ。十数分で語るのか。


 まあ良い。暫く其所に立っていた。すると私の前に約束されていた方が来られないらしく、飛ばして呼ばれた。


 予想を裏切り柔和な面持ちの担当者が立っている。

「どうぞお掛け下さい」


 座った私は分厚いメモ用紙とボールペンを置き、鞄から登記書等を取り出し並べた。彼はそれを一通り確認し、一層、フレンドリーとも思える顔になった。A4の紙に足りないものを三つほどと自身の名を書き、

「これらが揃ったらまたご連絡下さい」

「申請後、二、三日ですね、大丈夫でしょう」

 十分も要していない。


 想像するに予め調べていたことが伝わったのだろう。本気の人間には本気で接する。そういうものだ。


 あっけない対応に脱力した私は帰路を急ぐ。相変わらず手も冷たい。


 さて、問題はこの後である。不備を指摘され数回、赴くことになるのは覚悟している。もし一発合格なら万々歳だ。


 賽の目はどう転ぶか。見守られたい。


 (本日から改行段落下げ等、書き方を変えました)

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