第10話 紅茶好きの憂鬱

9話が一般向けには粘度が高過ぎたためサラッと流して10話。


私は紅茶が好きだ。

アールグレイを一日に何杯も飲む。

ホットかアイスかというとアイスが多い。

以前はコーヒー派だったのだが。

気が付くとこうなっていた。


紅茶には宜しくない副作用がある。

歯を染めるのだ。

歯を茶渋で赤くしてしまうのである。


ある初夏の日、年に一度の歯科検診で指摘された。

そこで入念に茶渋を落とされた後、歯磨きの指導を受ける。

そう、白くなくなった歯は歯医者で元に戻る。

「歯を白くする」世間の広告に惑わされてはならない。

歯が美しくないと思った時は歯科に直行すべきだ。

簡単に輝く歯になる。

ならなくともアドバイスはもらえる。


脱線した。

歯磨きである。

懇切丁寧な指導を受けた私は電動歯ブラシを買った。

教えを守った上、電動で磨けば完璧だろう。

一年間、自分なりに注意深く磨き次回の検診となった。

担当者は黙って歯を掃除し、徐に言う。

「細部まで磨けていませんね」

「もしかして見えていない部分がありますか?」

手鏡を渡され、ここ、ここ、と、口中を見せられる。

うーん。


帰宅後、私は反撃を開始した。

鏡を覗き込みながら電動歯ブラシ操る。

二分や三分ではない。

みっちり。


また一年が過ぎた。

また掃除された後、言葉を聞いた。

「綺麗に磨けていますね」

やった。

我ここに復讐を果たせり。

違う。

決して復讐ではない。

有り難きご指導の賜である。

おかげで虫歯にもならず良いこと尽くめだ。

長い歯磨きの手間という憂鬱を除けば。


そこの紅茶好き、お茶好き、コーヒー愛好者。

そして愛煙家の皆の衆。

歯医者は如何?

ただし、紅茶以外の汚れが落ちるとは限らない。

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