第26話 白亜の城

「やった〜!卒論終了したよ〜!後は提出するだけだ〜」


「ちゃんと通りますように」


「ちょっとはるくん、フラグたてようとするのやめて!」


「大丈夫だよ。なっちゃんなら問題ないよ。たまに、ごくたま〜にやらかすけどここ一番は強いからね」


たまに抜けてるよね


(に、人間味があっていいでしょ)


だから性別問わずにモテるんだよね


(どういうこと?)


完璧すぎるとイヤミだけど、隙があると親近感が湧くでしょ

 

(なるほど)


あ、納得したね


(ハメたね?)


人聞き悪いよ?


「さてと、最難関の卒論が終わったところで相談があります」


「あらたまってどうしたの?」


「あ、うん。実はね、由季からサークルの子達と卒業旅行に行かないかって誘われてね」


「へ〜、まあよくある話しだけどね。どこ行くの?」


「それはまだ決まってないんだけどね。せっかくだから海外に行きたいねって話になってるの」


「リッチだねぇ」


「あ、なるべく安くで済まそうって話はしてるんだよ!旅行中もできるだけ街歩きメインにして出費を抑えれるようにって」


「なっちゃん?」


「旅行中のごはんも温めるだけでいいように冷凍できるメニューを考えておくからね?」


「あ、もしかして俺が反対するかもって思ってる?」


「……しない?」


「しないよ。ただでさえ付き合いだしてから飲み会行かなくなって周りから反感買ったりしてるのに、記念の卒業旅行まで俺に遠慮しないでよ」


「反感買ってるの?私のせいで?」


「なっちゃんがね。付き合い悪くなったって言われるでしょ?」


「そんなこと言う人は本当の友達じゃないよ。飲み会じゃなくてもコミュニケーションは取れるんだもん。仲良い子達とは昼間にお茶会してるよ」


あなたは人気者だったからね


(きみには隠れファンがいたけどね)


隠れてたらわからないよ


(私みたいに堂々としないとね)


手を繋いだり?


(序の口よね)


腕を組んだり?


(牽制よね)


首にキスマークつけたり?


(特権よね)


そうなの?


(知らなかったの?)


ごめんなさい


(わかればよろしい)


「まあ、そういうことで楽しんできてよ。ごはんだって気にしなくても—」


「作りたいの。はるくんが外食の方がいいって言うならそうしてくれていいけど、できるだけ私が作りたいの。だめかな?」


「……まあ、外で食べたいとは思わないけどね」


「はい、じゃあ私の好きなようにさせてもらいます」


「言っても聞いてくれないからね」


「そう?嫌なら言ってくれていいのよ?」


「嫌って言ったら泣きそうな顔するのに?」


「泣くよ?だから言わないでね」


頑固者


(自覚してるからいいでしょ?)


「はいはい。あとお金のことも。一緒に住んでるからって遠慮し過ぎないように。せっかくの卒業旅行なんだからせめてみんなと合わせてね」


「う〜ん?まあ、はい。はるくんのお土産だけケチってくるね」


「ほ〜、それは名案だね」


「でしょ?私のセンスに任せてね」


ドヤ顔


(かわいい?)


もちろん


♢♢♢♢♢


「で、なつは行けるの?」


「大丈夫だよ」


「やっぱりね。春斗くんがダメって言うとは思わないもん。飲み会だって自主規制だもんね」


「まあ、そうなんだけどね」


「旅行中の春斗くんのごはんは作り置きするんでしょ?」


「さすが由季。よくわかってらっしゃる」


「重い」


「ひどっ!ちゃんと確認したもん!私がしたいようにしていいって言ってくれたもん!」


「もんってあんた……。どんだけ春斗くん好きなのよ?」


「表しようがないくらい?」


「過大表現とは思えないところが怖いわ」


「はいはい。あんた達の漫才はその辺にしといて旅行について話そうよ」


「あれ?涼子いつからいたのよ?」


「いまきたのよ。聡美ももうすぐ来るよ」


「呼んだ?遅くなってごめんね」


(涼子と聡美とお馴染みの由季)


悪友だね


(否定しないよ?)


「さてさて、みんな揃ったところで会議を始めましょうかね」


「由季議長、発言をお許しください」


「はい涼子議員。発言を認めます」


通常?


(臨時じゃないかしら?)


ヤジいる?


(子供には見せたくない番組よね)


「夏希議員の参加はフルですか?スポットですか?」


「フルに決まってるじゃない。ってか議会ごっこいつまでやるのよ」


「あははは。ひょっとしたら由季が議会運営に携わるかもしれないじゃない。だからちょっとだけ付き合ってあげたのよ」


「由季は公務員か〜。あの古い市役所に勤めるのよね?」


「どうかしら?どこかの出先ってこともあるかもね」


「意外と真面目な由季には似合ってると思うよ」


「ちょっとなつ、意外って失礼ね」


「私もなつの意見に同意だけどね」


「聡美?なつに毒されたわけ?」


「はいはい。本題に戻ろうか」


「涼子、あんたが原因よね?」


「そうね。私ヨーロッパがいいな〜」


「スルーしたわね?」


「ヨーロッパか〜、プラハなんて素敵よね」


「さすが聡美、ナイスチョイス。私は王道のパリがいいな」


「ふむふむ。聡美はプラハ、涼子はパリね。なつは?」


「私は白亜の城かな?」


「なるほど。お姫様はシンデレラ城……、もといノイシュヴァンシュタイン城ね。私はマッターホルンの麓のツェルマットに行ってみたいわね」


「見事にバラバラ」


「まあいいじゃない。みんなの意見をすり合わせて行き先を決めようか」


♢♢♢♢♢


「なるほど。それでドイツとフランスの弾丸ツアーに参加することになったんだね」


「そうなのよ。結局ツアーの方が安上がりになるみたいなの。ノイシュバンシュタイン城もモンサンミッシェルもツアーに含まれてるのよ」


「へぇ〜、それで3泊7日って結構ハードそうだね」


「若いうちにってね。新婚旅行はゆっくりしようね」


「気が早いよ」


「式場予約した人に言われたくないよ」


だね


(……ヨーロッパ旅行)



(シャンゼリゼ通りをきみと歩くの)


新婚旅行で……ね


(腕を組むの)


手を繋ぐじゃないの?


(足りないよ)


(そんなんじゃ、足りないよ)


「空港まで送るよ」


「本当?」


「うん。帰りも迎えに行くから」


「ありがとう。ふふふ、旅行以外にも楽しみが増えちゃった」

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