第60話 「はっ!!」
〇高津 紅
「はっ!!」
「…やるじゃん、あんた。」
SAIZO君と背中合わせで刀を振って。
追って来た敵は大方片付けた。
まだケガの傷が癒えてないままのSAIZO君は、きっといつもの力は出せていないはず。
本来、私なんかの助けは要らない実力の持ち主だろうに…
背中を預けてくれるのは、それほどの状況なのだと思えた。
「身体、大丈夫?」
「へーき。」
「……」
「それより…行かなきゃ。」
「…そうね。」
目を見合わせて、同時に跳び上がる。
後ろから放たれた銃弾が、地面に大きな穴をあけた。
「…あちらさん、焦って大きな武器使い始めたね。」
「人を何だと思ってるの…」
私のつぶやきに、SAIZO君が鼻で笑った気がした。
…人間兵器だったクセに…って思われたのかもしれない。
だけど、私は今…高津 紅。
世界が、人類が。
平和であるよう…幸せであるように、と。
心から願っている。
「俺、おとりになるから。援護してよ、紅さん。」
「!!」
驚いてSAIZO君を見ると。
切れ長の目が、私を捉えた。
「銃の腕は信頼出来るからね。頼むよ。」
「…任せて。」
人間兵器だったクセに…なんて…
この青年は、思わない。
私、何…卑屈になってるんだろう。
「Go!!」
SAIZO君は、その声と共に駆け出した。
路地を走り抜ける彼の前に立ちはだかったのは、巨大バズーカを持った三人組。
「させない!!」
あたしはSAIZO君が高く跳び上がったその足元から、三人組が放った弾丸目掛けてライフル銃を撃つ。
こちらの弾は、正面から当たれば弾丸を包み込んで失速、落下させる。
…当たれば、なんて。
当たらないわけがない。
「うわっ!!なっなんだ!?」
慌てた三人組には、レーザー銃をお見舞い。
瞬平と薫平が作った物を、万里君とさくらさんが改良した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
奇声と共に突っ伏した三人を、SAIZO君が『しばるくん』で手際よく拘束した。
「…さ、行こうか。港がヤバイ事になってる。」
そう言ったSAIZO君は、ずっと冷静に見えてたけど…少し焦ってる風で。
何となくだけど、泉ちゃんに危機が訪れてる予感がした。
「バイク乗れる?」
「もちろん。」
そう言いながらも、最後に乗ったのはいつだったか…なんて、らしくない事を考えた。
乗れる。
何だって出来る。
だって、私は今…守られているだけじゃない。
私だって、戦えるんだ。
二階堂のために。
『待って!!入っちゃダメだ!!人影はダミーだ!!』
ボン……ッ…!!
「え……」
突然、瞬平の声が聞こえたかと思うと、同時に爆発音が響いて。
右斜め前方から煙が上がり始めた。
〇高津 瞬平
『瞬平、今のは何だ!?』
浩也さんの声が入って来て。
僕は、さくらさんにだけ発信したと思ってた事が全員に渡った事に気付いた。
「…丘の上の一軒家が爆発しました。」
カチャカチャとキーボードを叩く。
…くそ…っ…!!
アーサーもキャサリンも騙されるなんて…
一条にも頭のいい奴が…
…CK47か…
「全二階堂に告ぐ。こちら高津瞬平。残念だけど、今回の戦い、うちだけじゃ勝てないよ。」
僕の言葉に納得がいったのか、それには誰も声を挙げなかった。
「街の中にいた敵を捕獲してくれたほとんどが、助っ人。分けてた通信、全部一緒にするから。」
そう言って、スイッチをオンにする。
「管理番号なんて…今は関係ない。僕達は、守らなきゃいけないんだ。」
モニターに、助っ人達のさっきまでの行動を映す。
僕も初めて見るそれは…SAIZOと思われる人物の目にも留まらない素早さと。
…母さんの、銃を構える姿。
なぜか、涙が溢れた。
二階堂では、小さな現場にしか出られなかった母さん。
僕と薫平には漏らした事はないけど、たぶんずっとモヤモヤしてたんだよね…
『同感。管理番号は必要ない』
その声に、僕は目を見開いて…安堵した。
「ボス…!!良かった…」
『瞬平の作ったリムレに救われた』
「え?」
『さくらさんが身に着けてたリムレが反応したんだ』
「……」
そう言えば…薫平が言ってた。
『瞬平が作ったリムレってやつ。俺が改良して最強にしたんだけどさ、ちょっと試しに貸し出していいかな』
…あいつ…
何…ファインプレーかましてくれてんだよ…!!
小さくガッツポーズをした。
僕の片割れ、やっぱり…サイコーだ…!!
〇二階堂 泉
『………を捕獲してくれたほとんどが、助っ人。分けてた通信、全部一緒にするから』
かすかに…瞬平の声が聞こえて目を開けると。
…真っ暗だった。
『管理番号なんて…今は関係ない。僕達は、守らなきゃいけないんだ』
…どうしたんだろ。
瞬平が熱い事言ってる。
何かに毒されたのかな。
そう思って小さく笑うと、そばで何かが動いた。
「い…うー…何だ?真っ暗だな…」
ああ、アオイか…
『同感。管理番号は必要ない』
兄貴の声………あれ?
『ボス…!!良かった…』
『瞬平の作ったリムレに救われた』
『え?』
『さくらさんが身に着けてたリムレが反応したんだ』
兄貴の声、チップからじゃなくて…近くに聞こえる。
そう思ってると。
「見-つけたっ。」
明るい声と共に、頭上が明るくなった。
「泉!!」
兄貴の安心したような声。
ちょっと…背景のオレンジ色が眩しくて、よく見えない。
「アオイ、平気か?」
「ああ…あいてー…誰かにスタンガンくらわされた…」
アオイが首元を押さえながら、兄貴の手を借りて地上に上がる。
それに続いて、あたしも地上に。
「え…?」
地上に出ると、家が消滅してた。
「どういう事?」
さくらさんと兄貴に問いかけると。
「キャサリンもアーサーも騙された。中にいたのは住民でも敵でもなく、爆弾だった。」
兄貴が目を細めて言った。
「……」
それってー…
一条、優秀な奴がいるな。
高津ツインズの装置の上を行くなんてさ。
ふと足元を見ると…
「…防護シート…」
あたしとアオイが落とされてた穴の上に掛けてあったらしいそれは。
「薫平が作ったやつだ…」
手にしてつぶやく。
…そっか。
あのまま突入したら、あたしとアオイは吹っ飛んでた。
薫平…助けてくれたんだ。
「泉ちゃん!!」
名前を呼ばれて振り返ると、バイクに乗った黒装束が二人…
「…紅さん?」
紅さんは自分の姿に気付いたのか、あたしと兄貴を見て少し恥ずかしそうにした。
けど…
「無事で良かったです…」
バイクから降りて、胸に手を当てた。
…その後ろから、もう一人…
「……」
頭巾からのぞく、涼し気な切れ長の…
「…トシ?」
あたしが首を傾げてそう言うと。
「…っ…」
トシの目は、驚きに見開かれた。
ん?
どうしてそんなに驚くの?
て言うか…
なんであんたまで忍者(笑)
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