第11話 驚きの称号と僕の決心 オリゲール視点
今日はアヤカの魔力量と称号を測定するの日。
魔導師副団長のルーカスと共に勉強部屋へと向かった。
先に来ていたアヤカにルーカスを紹介すると、ルーカスはアヤカをまじまじと見ながら、言った。
「こちらこそよろしくお願いします。しかし、噂には聞いていたけどこれほどとはね。」
ルーカスの言葉に可愛く首を傾げるアヤカ。
「アヤカちゃんが女神様にそっくりっていう噂。昨日、国王との謁見の後、その場にいた貴族達と騎士達の間でその話で持ちきりだったんだ」
アヤカはそんなルーカスの言葉を一笑した。
「私が女神様に似ているなんて女神様に怒られちゃいますよ」
やれやれ本人は周りの視線を独り占めしていたことには無自覚らしい。
「イヤイヤ、本当にそっくりだって。あの後、自分の息子に婚約者がいない貴族達はこぞって絵姿を用意してるはずさ」
「何のためにですか?」
「へ? そりゃあ、アヤカちゃんとのお見合いのためにでしょう」
「お見合い?!」
よほど驚いたのか甲高い声が返ってきた。
まったく、ルーカスのやつ余計なことを。
僕はルーカスの頭を軽くこずいた。
「こら、アヤカになに余計な事を言ってるんだい?お見合いなんてこの僕が許す訳ないだろう」
実際、今日の朝から王宮に届きだした釣書は全部、僕のところに届けるように手配済みだ。
あの欲にまみれた腹黒貴族たちにアヤカを引き合わせる気はない。
「さあ、それより始めるよ」
アヤカが魔石版に両手を置くとほどなくしてから、七色に光り出した。
やがてそれは部屋を包み込みまた魔石版へと収まった。
その間、アヤカは「わあ~綺麗!」と無邪気にはしゃいでいたが、その場にいた僕達はそれどころではなかった。
通常の魔石版の光かたではないうえに七色の光にも驚いた。
「あの~」
アヤカが発した声にハッとして僕はルーカスに記録を取るように言った。
「魔力量は申し分ないな。全属性持ちで光属性に特化してるな。それにしても、女神の愛し子に聖霊姫か・・・しかも名付けの愛し子だ。聖霊姫は『ドール』が冠ってことはエルフの聖霊か」
アヤカは女神と聖霊から名前を授かった愛し子だった。女神は『ティナ』エルフ族の聖霊は『ドール』を冠として自分の愛し子に名前を付ける。
しかし、称号は授けても名付けをするのは最愛の愛し子にしかしないと言われている。
「オリゲール、これは近日中にエルフの王族から接触があるかもな、さっきの虹の波動をエルフ族が見逃すとは思えない」
七色の光は聖霊の加護を受けた者に現れる現象だ。未だかつて人族にその現象が現れたことはない。
エルフ族の神官長は聖霊眼持ちと言われている。その聖霊眼で聖霊の加護を受けた者を見つけ保護するらしい。
「そうだな。向こうがどう出るかだな」
その後、護衛のディランから守りの強化を提案され、侍女のミリアーナからも防御魔法のレベルアップの必要性を指摘された。
「うむ、護衛の強化は早速、宰相に進言しよう。防御魔法のレベル上げもアヤカには魔導師団に通ってもらって特訓だな」
「オリゲール、久方ぶりの名付けの愛し子の出現だ魔族の国や獣人族の国も絡んでくるかもしれないぞ」
ルーカスの意見ももっともだ。
「そうだな、早速この測定結果をもって宰相と国王に面会を申し込んでくるとするか。アヤカ、疲れただろう。部屋に戻って休むと良い」
大きな瞳で心配そうに僕を見上げるアヤカの頬にそっと触れて微笑んだ。
隣でルーカスが驚いたように息を飲むのを感じたが完全無視だ。
僕は部屋を出ると宰相の執務室へと向かった。
宰相の執務室で国王と宰相のサムネル様に記録紙を見せながらアヤカの魔力測定時に起こったことを話した。
「女神の愛し子に聖霊姫か。しかも名付けの愛し子。なるほどな、エレノアの懐妊を言い当てたりこれから産まれる王女の言葉を受け取ったりと不思議な少女だと思っていたが、納得だな」
「そうですね。それにアヤカ嬢は歳のわりに人の心を汲み取ることができる聡明さがあります。我が娘の高圧的な物言いにもやんわりと対応する機転がありました」
「うむ、アヤカは我が国で幸せになってもらいたい。エルフ族の王族がなんと言って来ても渡す訳には行かないな。それにしても、これだけ魔力量が多いのに攻撃魔法の適性無しとはどういうことだ」
「それですが、今後、アヤカの守りの強化のために、護衛の人数を増やして欲しいのですが」
「そうですね。攻撃魔法が使えないとなればその方が安心ですね。騎士団には私から話を通しておきましょう」
「サムネル様、よろしくお願いします。神殿への報告と防御魔法のレベル上げなどは魔導師団で私が担当します」
「ほお、オリゲールは随分とアヤカに眼をかけているな。昨日の様子だと、魔力の相性も良いようだな」
国王はそう言って僕の目を真っ直ぐに見た。
「魔力の相性はとても良いです。あんなに綺麗な魔力は見たことないくらいです。アヤカは魂のオーラまでも綺麗なんです」
僕の言葉に国王と、サムネル様は感心したようにうなずいた。
そしてサムネル様が驚く事を口にした。
「今後、アヤカ嬢の情報を入手した他国がどのような動きに出るか検討もつかない現状です。友好的な関係を築いているとはいえ、牽制の意味も込めてここは王族であるオリゲール殿との婚約を整えてはどうでしょうか?」
「まてまて、王族との婚約なら第二王子のレイモンドでも良いではないか?」
「レイモンド殿下はこれからご自分の好きなご令嬢を選び放題じゃないですか。この先、オリゲール殿と魔力の相性の合うお相手が現れる確率の方が少ないと思いますゆえ」
「選び放題ってサムネル……」
「えっ? で、ですが、アヤカはまだ8歳の子供ですよ。いくらなんでも僕とは年が離れています」
「離れているとは言っても13歳ですよ。このくらいの年の差は許容範囲ですよ、オリゲール殿」
「許容範囲……」
そうなんだろうか?
今まで諦めていた家族を持つという夢を見ても良いのだろうか?
「出来れば僕のこの手でアヤカを幸せにしてあげたい。アヤカが僕を選んでくれるなら、今すぐにでも」
「おいおい、オリゲール落ち着け。どう考えても今すぐは無理だ。アヤカはまだ成人していないからな。いずれにしてもアヤカ本人の気持ちと保護者のマサキの許可もいるぞ。とりあえず、親善外交のために魔族の国に行ってるお前の両親に手紙を送っておいたらどうだ? 帰国したら改めて話し合おう」
僕はアヤカの幸せを誰よりも願っている。
この先、あんなに魔力の相性の良い相手はきっと現れないだろう。
できれば、この手で幸せにしてあげたい。
だが、アヤカにとってはどうだろうか?
僕のことは13歳も年上のただのおじさんにしか見えないだろう。
サムネル様の提案はアヤカとマサキが断るに違いない。
だが、そばで彼女が幸せになれるように守ることは出来るだろう。
だから、僕は僕ができる方法でアヤカを守ろう。
この世界に来て良かったと思ってくれるように。
寂しい思いをしないように。
その後、護衛の騎士の人選とこれから増えるであろう社交のため、マナーの勉強の時間や先生の選出、防御魔法の訓練などの計画をざっと話し合って僕は執務室を後にした。
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