第10話 魔力測定と私の称号
さて、やって参りました。
魔力測定の日です。
今日はシフォン生地のイエローのワンピース、くるぶし丈。
半袖の裾はひらりと広がって幅の広いイエローのシルクのリボンが背中でアクセントになっている。
安定の子供らしさです。
今日はマー君の部屋のフリースペースにテーブルをセッティングしてもらって朝食です。
もちろん朝一番に昨日のお礼を言ったよ。
「可愛いアヤが喜んでくれるのが一番のお礼だよ。」と、イケメンスマイルのマー君は本当のお兄ちゃんみたいです。
朝食を食べてマー君は早速騎士団にご出勤。
何でも今日は朝当番らしい。
何するんだろう?部活みたいだね。
そのままマー君の部屋で護衛のディランさんが来るのをミリアさんと待つ。
程なくするとドアをノックする音とディランさんの「おはようございます」と言う声がした。
「おはようございます。ディランさん。今日もよろしくお願いします。」
と元気良く挨拶する私に満面の笑みを返してくれるディランさん。
相変わらず癒されます。
ミリアさんとディランさんに付き添われて昨日のお勉強部屋に到着。
今日は私の方が早くつきました。
連日遅刻などもってのほかだものね。
まだ何もしていないのにやり切った感に浸ってニマニマしていると後ろから声を掛けられた。
「朝からご機嫌だね、アヤカ」
あまりにもビックリしたので「ひぁい?!」と変な声が出てしまった。
「オリゲール先生!びっくりしました」
「ごめん、ごめん、あんまり可愛い笑顔だったから。驚かせちゃったね」
オリゲール先生は今日は魔導師の黒のローブ姿で、後ろにもう1人同じ格好の若者を連れていた。
あ、そうだまずは昨日のお礼を言わなきゃね。
「オリゲール先生、おはようございます。昨日はいろいろありがとうございました」
「おはよう。昨日は僕の方こそ楽しませてもらったよ」
と私の右手の甲にチュッとキスをした。
も、もう~オリゲール先生の挨拶はいちいち心臓に悪いです。
あ、ほら、後ろの魔導師さんも驚いてるじゃないですか。
それに今日はミリアさんとディランさんがいても大丈夫みたいだ。
2人は部屋のドア付近でじっとしていた。
「今日はアヤカの魔力測定をするよ。こちらは魔導師団のルーカス・シナルディだ。魔導師団の副団長だよ」
ルーカスさんは紺色の短髪に緑の瞳の爽やかイケメンさんです。
オリゲール先生と同い年くらいでしょうか。
「彩香です。よろしくお願いします。ルーカスさん」
とご挨拶すると、
「こちらこそよろしくお願いします。しかし、噂には聞いていたけどこれほどとはね」
と言った。
噂?何のだろう?首を傾げていると、ルーカスさんが言った。
「アヤカちゃんが女神様にそっくりっていう噂。昨日、国王との謁見の後、その場にいた貴族達と騎士達の間でその話で持ちきりだったんだ」
ああ、そう言えば、国王様がそんな事を言っていたような気もするな。
きっと、似てると言っても長い黒髪に黒目だってくらいでたいして似ていないに違いない。
所詮、噂なんてそんなものだ。
「私が女神様に似ているなんて女神様に怒られちゃいますよ」
「イヤイヤ、本当にそっくりだって。あの後、自分の息子に婚約者がいない貴族達はこぞって絵姿を用意してるはずさ」
絵姿?肖像画みたいなやつ?
「何のためにですか?」
「へ? そりゃあ、アヤカちゃんとのお見合いのためにでしょう」
「お見合い?!」
恐るべし異世界!8歳でお見合いなんてアウトでしょう!
唖然としていると、オリゲール先生がルーカスさんの頭を軽くこずいた。
「こら、アヤカになに余計な事を言ってるんだい?お見合いなんてこの僕が許す訳ないでしょう」
おお~さすが、かわいい生徒を守ってくれる良い先生です。
笑顔が怖いのはきっと気のせいでしょう。
「さあ、それより始めるよ」
と言って机の上に2枚の四角い銀色の板を並べて置いた。
1枚の大きさはだいたいA4 サイズくらいかな。
「アヤカ、これは魔石版だよ。それぞれの魔石版に手をついて測定をするんだ。右手の魔石版で魔力量と属性が、左手の魔石版で称号と加護とスキルがわかるんだ」
ほお~これで測定するんですね。水晶玉とかじゃないんだね。
キラキラの笑顔のオリゲール先生には申し訳ないけど、あまり期待はしないでね。
勇者のおまけに過度の期待は禁物ですよ。
「さあ、アヤカ、手をついて。良いと言うまで手を離しちゃダメだよ」
私は頷くとおずおずと魔石版に両手をついた。
ひんやりとした感触がしたかと思うとだんだんほんわりと暖かくなってそして魔石版が七色に光出した。
「わあ~綺麗!」
手元から広がった七色の光は部屋中を照らしてやがてまた手元に何事もなかったかのように収まった。
えーと、まだこのままかな?
測定は終わったみたいだけど……
オリゲール先生の方を見ると大きく目を見開いて私の手元を見ていた。
他の3人も驚いたような顔をしていた。
あれ?綺麗だと思ってテンションが上がったのは私だけ?
「あの~」と声をかけるとオリゲール先生がハッとしたように反応した。
「アヤカ、もう手を離しても良いよ。」
そう言われて魔石版から手を離すと、そこには文字が浮き出ていた。
「ルーカス、測定結果を記録して」
「わ、わかった」
ルーカスさんはローブの内側から、30センチほどの杖と文庫本サイズ位に折りたたんだ紙を取り出した。
折りたたんだ紙を手に乗せると杖で3回軽く叩いた。
すると紙はひとりでに開き空中に浮かんだ。
お~魔法だ!
「これは記録紙だよ。これに魔石版の測定結果を転写するんだ」
とオリゲール先生が言った。
ルーカスさんが文字の浮き上がった魔石版の上に杖をかざし「サルーシャ」と謎の言葉を唱えると魔石版の文字が次々と空中の用紙に吸い込まれていった。
最後の文字が魔石版から無くなるのを確認してからみんなで空中の記録紙を覗き見る。
そこには魔力量や属性、称号、加護、スキルが記されていた。
魔力量 5000リーヤ
属性 光、火、水、風、土
防御魔法 適性あり level 1
攻撃魔法 適性無し level 0
治癒魔法 適性あり level 3
創造魔法 適性あり level 1
生活魔法 ALL
称号 女神の愛し子 「レミア・ティナ」
聖霊姫 「ライリン・ドール」
加護 女神の加護
聖霊の加護
スキル 癒しの手
緑の手
言霊の術師
薬師のたまご
これって良いの?悪いの?聖女ではないって事は確かだね。
とりあえず、称号と加護が女神様と聖霊様の後ろ盾がある感じでホッとした。
だって、称号が本当に『勇者のおまけ』や『巻き込まれた一般人』だったら落ち込むもんね。
女神様と聖霊様ありがとうございます。
あれ?でもよく考えたら勇者や聖女はこの世界でちゃんと役目があるけど、『女神の愛し子』と『聖霊姫』はどうなんだろう?
一見すると豪華な称号のような気がするけど、役目が思いつかない……
やっぱりあれか、おまけだからか?
そんな事を思っていると、後ろからオリゲール先生の声がした。
「魔力量は申し分ないな。スキルも光属性に特化してるな。それにしても、女神の愛し子に聖霊姫か・・・しかも名付けの愛し子だ。聖霊姫は『ドール』が冠ってことはエルフの聖霊か」
名付け?
『レミア・ティナ』と『ライリン・ドール』が名前ってことかな?
「オリゲール、これは近日中にエルフの王族から接触があるかもな、さっきの虹の波動をエルフ族が見逃すとは思えない。」
「そうだな。向こうがどう出るかだな」
「オリゲール様、ルーカス様、攻撃魔法の適性無しと言うことは、自衛本能が発動しないと言うことですよね?今後他国の動きも気になります。アヤカ様の守りを強化した方が良いのでは?」
先ほどまで存在感を消していたディランさんがそう言うと、ミリアさんが
「護衛の強化も必要ですが、防御魔法のレベルを早急に上げなければいけませんね。」と言った。
「うむ、護衛の強化は早速、宰相に進言しよう。防御魔法のレベル上げもアヤカには魔導師団に通ってもらって特訓だな」
「オリゲール、久方ぶりの名付けの申し子の出現だ魔族の国や獣人族の国も絡んでくるかもしれないぞ」
何故か当事者の私を置き去りにして会話は進んでいく。
しかも私ってば、この国の役に立つどころか、迷惑をかけてる感じ?
「そうだな、早速この測定結果をもって宰相と国王に面会を申し込んでくるとするか。アヤカ、疲れただろう。部屋に戻って休むと良い」
と、オリゲール先生は言うと笑顔で私の頬を撫でた。
相変わらずオリゲール先生の笑顔は反則です。心臓がドキドキして痛いくらいです。
マー君とディランさんの笑顔はほんわか癒されるのに、どうもオリゲール先生の笑顔は心臓に悪い。
その後、私は部屋に戻った。
さて、昼寝でもしますか。
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