目覚め
「さぁ第一試合はテリシアVSエドワードです。両者準備はいいですか...はじめ」
合図とともに僕とテリシアの勝負が始まる。
なんの偶然か僕はテリシアと戦うことになった。幸いにも棄権しなくて済んだのだが正直一位である彼女とは戦いたくなかった。観戦している貴族達はヴェルノ伯爵家対王族という好カードに湧いていた。
「エドワード。十年前は我々王族が破れましたが二度そんなことを許すわけにはいきません。全力でいかせていただきます。血統魔法
テリシアの金髪碧眼がみるみるうちに真紅の赤へと変わっていく。試験で見てきたただの身体強化とは毛色が違い周りに魔力のようなものが可視化できた。
「たとえ身体強化を碌に扱えていなかったあなた相手でも手は一切抜きません。死にたくなかったら降参してください。」
「せっかくだけど、この機会を逃したくないから降参は遠慮しとくよ。」
僕はテリシアの初撃を受けるために正面に剣を構える。場内の盛り上がりは最高潮に達していた。
「いつのまに血統魔法を使えるようになったの!」
「王族だけが使える
「どうにもできないでしょう。テリシアが
「エリック兄様エドは大丈夫でしょうか。身体強化されていない生身の体でテリシアの一撃を受けたら最悪死んでしまうことも」
心配そうにエドワードを見つめエリックに問うリエール。そんなエリックも降参する様子を見せないエドワードを見て険しい表情をしていた。
「あの子は相手が誰であろうと一切手を抜かないわ。エドくん死ぬかもね」
「そんな。試合を止めなきゃ。」
アリシアの話を聞いて試合を止めにいこうとするリエールをエリックは手で制する。
「それはダメだリエール。エドが戦うかどうかを決めるのはエド自身だ。エドは降参する様子はないつまりはそういうことだ。ここはエドの意思を尊重するべきだ。」
「そんな.....エド....っ」
エリック兄様に説き伏せられその場に座り込んでしまうリエール。エリーゼ先生も止めようとしないただ静かにエドを眺めているのだった。
「いきますよエド。私の全力を受けれるのなら受けてみてくださいっ。」
「.....っ」
何も見えなかった。気づけば会場の壁にひびが入るほどうちつけられていた。全身が痛い。肺に空気が入ってこない息ができない。僕は地面に倒れ伏し血を吐いた。
一瞬の出来事に会場は凍りつく。白熱する戦いが見られると思われた勝負はたったの一撃あまりにもあっけないものだった
——精霊魔法
目の前が真っ暗の暗闇の中、直接心に話しかけてくるように声が聞こえた。痛みがみるみるうちに引いていく。
——おいクロウ。聞きたいことは山ほどあるが先に目の前の奴を倒すぞ。
目を開けると目の前に赤い光があった。僕は痛みを完全に感じなくなった体をゆっくり起こした。
「君は一体何? 」
——クロウお前頭を打ったのか? それにそのなり.....一体あれから何があったのかすぐにでも聞きたいが......先に戦いを終わらせるぞ。
この得体の知れないものが言う通り僕はテリシアの方を向き歩み寄る。
「エドワードあなた...一体何をしたのですか? 」
決着がついたかに思われた一撃から起き上がりテリシアを含め会場の貴族達皆驚いていた。
——どんな無茶な戦いをしたのかわからないがお前の魔力がほとんどねぇこれじゃあ精霊魔法も碌に使えねぇじゃねぇか。長くは持たないが仕方ない。精霊強化魔法
全身を炎が包み込む。しかし熱くはない。徐々に炎が収まり炎を全身に纏う。
「エドワードあなた属性魔法が使えたのですか? それなら何故試験では隠して...いえそんなことは今どうでもいいことですね。あなたの全力を見せてください」
「ああ。そうするよ」
脚に力を入れテリシアの後ろに回り込む。テリシアは反応できていないそのまま背中に一閃を浴びせ蹴り飛ばす。テリシアはすぐさま受け身を取り体制を立て直しエドワードを見据える。
——おいクロウちんたらしてんじゃねぇもうもたねぇぞ
みるみるうちに全身を覆っていた炎が鎮火していく。僕は急いで次の攻撃を仕掛ける。真っ正面から切りつけそのまま力で思いっきりテリシアを吹き飛ばした。
——時間切れだクロウ
その瞬間僕は膝から崩れ落ちた。体に力が入らない。もう指一本動かすことはできないそうして顔に土の感触を感じながら僕は意識を手放した。
「そんな....そんなはずは...」
「エド。いつのまに属性魔法を」
「エドくんやるわね。属性魔法が使えるなんて、でもあんな魔法見たことないわ『昇華」と身体強化の合わせ技をしたアリシアを上回る身体強化の属性魔法なんて見たことないわ。」
「違う。あれは属性魔法なんかではありません。精霊魔法です。」
「精霊魔法だと....エドが使えるはずがない」
エリーゼ先生の発言にエリック達は理解できないでいた。精霊魔法とは精霊が使う魔法のことで人間が使えるものではない。
「人間であるエドワード様が何故使えるのかは分かりませんがあれは間違いなく精霊魔法です。」
家庭教師であるエリーゼ先生は研究者としての一面も併せ持っている。そんなエリーゼ先生が言うのだからまず精霊魔法であることは間違いない。
「それよりエドとテリシアは大丈夫なのかしら」
「おそらく問題ないでしょう。ただ気絶しているだけだと思われます」
心配そうにしているリエールにそうエリーゼ先生は声をかける。テリシアとエドワードはすぐさま医務室へと運ばれていった。
「これは引き分けだねエリック。私達の妹と弟はもしかしたら私達が五歳の時より強いかもね」
「どうだろうな。しかし思ったより中々面白いものが見れた。アリシアいくぞ。」
「そうだね面白かった。それじゃリエールちゃんまたね」
エドワードの試合が終わり早々と去っていくエリックとアリシア。エドワードとテリシアの試合が終わってから試合は次々と行われたがエドワードとテリシアの戦いを見た後だとどれも見劣りしてしまうものだった。
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