初めての試験と精霊魔法
異変
「エドワード様また魔力が強くなっています。」
アイリスがいなくなってから2カ月、追い込むよう僕は毎日修練をこなしていった。2カ月たったものの身体強化は未だに使うことができなった。そんな中魔力の感知能力の優れた先生曰く、魔力だけが異常に強くなっているらしい。魔力の強さは修練する事で多少変わるが生まれた時に大体決まってしまうもので急に強くなることはまずない。
「そんなに毎日強くなるものなんですか?先生」
「魔力がここまで強くなるなんて聞いたことがありません。まるで今まで眠ったいた魔力が解放されてるような、わたしも初めて目の当たりにして驚いています。」
魔力とは文字通り魔法の力で同じ魔法でも魔力の違いで継続時間、効果範囲、威力全てが変わって来る。魔力はあくまで力でありそれを扱えなければ宝の持ち腐れだ。かくいう僕も身体強化すら扱えていない。
「明日の試験は模擬戦も行われます。今回の試験に参加するのはおそらく貴族や王族といった子供たちだけです。そのためこの模擬戦は家の名誉と威信をかけた代理戦争の意味を含むところがあります。そんな親たちの争いに巻き込まれて気の毒ですが皆最高の環境で日々修練をこなしてきたはずです。その中でも得に長男の方はこの模擬戦で確実に勝ちを取るためにあらゆる修練をつんできていることでしょう。身体強化を使えないエドワード様にはとても厳しい戦いになることが予想されます。ですので長男の方と当たった場合は棄権してください。相手はあのヴェルノ伯爵家に勝ったと箔をつけるためエドワード様に全力で向かって来ることになります。もしそれで一方的な戦いになってしまっては良からぬ噂が流れるかもしれません。棄権しても少しは噂がたつかもしれませんがわたしの見立てではエドワード様はおそらく魔力測定で他を圧倒するので大丈夫です。」
申し訳なさそうに僕に伝えるエリーゼ先生。
これに関しては身体強化を後回しにした僕が悪い。でも、僕はたとえ身体強化を使えなくとも同年代の子との力量さをはかるには絶好の機会なので手合わせして見たかった。だが、エリーゼ先生から言われたことに少しのショックを受け理解したが納得はしていない。今回の模擬戦は身体強化の有無が大きいだろう。
「長男でなければ戦っていいんですか?」
「ええ。今回行われる模擬戦は5〜7歳の王族、貴族で行われることになるでしょう。その中には今回受けるかは分かりませんが長男でなければ7歳のクサド男爵家の三男であるベリド様、5歳の第三王女テリシア様という今ではあまり勝ち目がない方々がいますが、その他と当たった場合は勝てるかはわかりませんが少なくとも善戦はするはずです。二人方に関しても元々格上ですから負けても問題ありまん。」
さっきとは打って変わってなぜか自慢げに話すエリーゼ先生。この機会を絶対に逃したくない僕は長男と当たらないことを願うばかりだった。
その夜僕は緊張からか眠れなくなり屋敷を飛び出して素振りをしていた。素振りをする事で心を無にする。涼しい夜の風を肌に感じただ剣を振る。すると背中から足音が聞こえた。
「エド。こんな遅くまで起きていたらダメじゃないか明日は試験だろう」
「すいませんエリック兄様...緊張して眠れなくて」
僕は素振りをやめ剣をしまい後ろを振り向く。春のおぼろげな月の光が二人を照らす。
「そうか....私も眠れなくてな」
「え?」
「実は初仕事が入ってな..戦争に行かなければならない」
「そんな...」
エリック兄様は僕をみてなぜか笑う。
「心配するな、私の部隊に課せられたのはただの調査任務だ。死ぬ危険性は少ない。」
エリックは学院を卒業後そのまま総勢100名からなるエリート部隊、第1魔法部隊に入り15歳にしてその実力が認められ小隊長に任命された。そんなエリックの初仕事の日程が決まったのだった。いくら優秀だといっても初の戦争に部隊を任されている重圧はまだ15歳のエリックには重すぎるものだった
僕はそんなエリック兄様に何と言ったらいいか分からず黙るしかなかった。
「心配させるような言い方をして悪かったな私は明日も早いからもう寝る。エドも明日の試験に備え早く寝なさい。頑張れよ」
そう言って踵を返しエリック兄様は屋敷の方へゆっくりと歩いていく。僕にはそんなエリック兄様の背中がとても大きいように見えたのだった。
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