はじめての家族
見慣れた天井だ。このベットの感触もよく知っている。おそらくは屋敷の僕の部屋に運ばれたのだろう。
「目覚めたようですね。気分はどうですかエドワード様。魔力コントロールが上手くいって身体強化を使えるまで屋敷には入れないつもりでしたがアリスが危険だと判断したので運ばせて頂きました。」
「先生ごめんなさい...僕にはまだ難しかったようです」
「諦めるのですか? あなたは今回で強制的にではありましたがやっと逃げ続けていた魔力コントロールの修練に向き合うことが出来ました。確かに修練は上手くいってないのかもしれませんがこれは大きな一歩です。やったことに意味があるのです」
先生は僕を励ましてくれているのだろうか、しかし、やっては見たものの出来なかった、頑張ったとは思うんだけど全然上手くいかなかった。
「でも...結局は何も...そもそも僕には出来ないんじゃないかなって」
「たった1日で何を言ってるんですか。基礎中の基礎ではありますがそんな簡単に出来るものじゃありません。毎日必死にやればエドワード様にも出来ます。安心してください明日からあなたが何を言おうが私の言う事を無理やりにでも聞いてもらいます。私の言う事を聞けば必ず出来るようになります。それは上級魔導師である私が保証しましょう。」
1日で出来ないようなことをさせそうとしていたとは先生も人が悪いと思ったが、先生の言葉に僕は救われたような気がした。一人でやみくもにやるとどうしても上手くいかないたびにネガティブな感情が溢れてくることが今回で分かった。まだ諦めるのは早いのかもしれない。諦めるのは先生の言う通りにやってからでもいいのではないとそう思えた。
「僕でも身体強化が使えるようになりますか? 」
「ええ、必ず、必ず使えるようになります。」
僕は笑った何か憑かれたものがとれたような気分だ。やりたくないことをするのはとてもしんどく苦しいいが、何も一人でやる必要はない僕には助けてくれる人がいるのだから。 それにしてもさっきから気になっていたが何やら扉の外が騒がしい
「エド! 」
リエール姉様が僕に飛びついてくるものだから衝撃で心臓が飛び出るかと思った。
「もう大丈夫だからね。お姉様がもう絶対にこんなことさせたりしないから。お腹空いてない? 何処か怪我はない? 喉は乾いてない? 」
「リエール姉様痛いです。離れてください」
「エドまさか頭を打ったの。離れてだなんて絶対どこかおかしいわね。医者に診てもらったほうがいいわ」
お姉様は伯爵家の娘として数々のマナーを叩き込まれていて歳の割にしっかりとしている普段はこんなことないのだが、僕に対してはいつもこうだ。抱きついて頬を擦り寄せてくるが抱きつく腕の力が強く正直少し痛い。
「リエール。エドが困っているだろ離れてやれ」
エリック兄様にやめるよう促される。兄様に従って離れるリエール姉様いつもの光景だ。父様、母様も様子を見にきたようだ。僕の部屋にこんなに家族が集まることは滅多にない。そういえば僕が倒れるなんてことは初めてだったな
「気分はどうだ。大丈夫なのか? 」
「はい、父様、それに母様、姉様と兄様それとアリスもう大丈夫です心配かけて申し訳ございません」
家族の陰に隠れてはいたがどうやらアイリスも様子を見に来てくれたらしい。こうして転生する前は家族というものを知らず、気にしたことなどなかったがとても良いものだなと心から思った。
*******
ご飯を食べ終えお風呂に入り今僕はアイリスと二人っきりで部屋にいる。
「本当に心配したよ目の前で急に倒れるもんだから」
「ごめん心配かけたね。助かったよアイリス」
何故か黙って見つめてくるアイリスに僕は照れ臭くなって目を逸らした。真剣な眼差しでアイリスが見つめるものだから重たい空気が流れた気がした。
「ねぇクロウあのね私少しの間あなたの側を離れなきゃならないの多分10年は会えない」
「.....そんな事急に言われても困るよ一体そんな10年間もどうするていうんだ」
「私達ってずっと一緒にいるじゃないこの機会にそれぞれ別行動してみるのも面白いかなぁと思って」
おかしい何かおかしいアイリスがこんな事言うわけがない。何か僕にはいえないことがあるのか、それともまさか愛想を尽かされたのだろうか
「だめだ、僕にはアイリスが必要だ。アイリスがいなくなって僕は一人でやっていける自信がない」
「クロウの口からそんなことを聞けるなんて嬉しいような悲しいような。でも一生会えなくなるわけじゃないし、一生に一回くらいこういう時間があってもいいのかなと思うんだけど、お願い聞いてくれない? 」
ずっと一緒にいたアイリスにそんなお願いをされて悲しいを通り越してだんだん怒りがこみ上げてきた
「聞けない。僕はそんな時間必要ないと思ってる。そもそもアイリスはアンドロイドだ。主人である僕のいうことを聞くのが当たり前だろ。離れるなこれは人間からの命令だっ」
言ってしまった。こんなの最低な事だ。普段なら絶対こんなこと言わないが怒りと今日の疲れであろうことかアイリスに決して言ってはいけないことをしてしまった。
「......クロウなら聞いてくれると思っていたのに...もう知らない」
アイリスは部屋の扉を勢いよく開けて出て行ってしまった。部屋には僕一人が残された。
「僕だってアイリスのことなんか」
ベットに倒れこみつぶやくが誰も聞いてやしない。アイリスが泣いているのを初めて見た。僕は怒りから出て行ったアイリスを追いかけることが出来なかった。このままでは本当に会えなくなるかもしれないのに。
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