現実逃避

すっかり空も赤くなって少し肌寒くなってきた

「はぁ...はぁ、これはきついまじきついもう無理、暖かい布団に入りたい温かいスープ飲みたい」


少しでも集中力が切れればすぐに失敗する。時間が経つにつれ集中力がなくなってきて辛くなってくる。魔力をコントロールするための修練で初めにやるのはまず集中し体の中心に温かいものを感じたらそれを全身に行き渡らせる。それからエネルギー濃度が一定になるように調整するだったか。


「むむむ...感じる感じるがどれだけやっても全身に行くまで息がもたない」


そもそも息止まるのはおかしいと先生にも言われたがどうもエネルギーを移動させようとすると息が止まる。力み過ぎなのだろうか。まず剣を振る時に使う力は筋力なのは分かるが魔法を使うときに使う力、魔力はどうやったら使えるんだ。力んで使えるのは筋力だ。そんなことはわかっている。


「分からん、そもそも魔導師向いてねぇのかな」


なんかこうキッカケがあればいけそうなんだけど、魔力コントロールの補助する道具とかないのかな、エリーゼ先生あれだろ天才て奴だコントロールになんの補助もなく感覚で出来てしまったタイプか。こんな寒い中でこんな現実逃避な考えしか出てこない。そもそも家庭教師として生計を立てているエリーゼ先生がそんなことを知らないわけがない。


「そういえばアイリスこういう時はこっそり夕飯持ってきてくれるもんじゃないのか」


屋敷の方を見たが全く人が来る気配がない。もう集中力の限界だ頭が焼き切れそうだ。空腹も一線を超えてあまり感じなくなってきている。それよりもだんだんと眠気が襲う。


「こんなところで寝たら死んでしま...」


2月の寒い中つい気を抜いてしまい意識を手放してしまった。


*******


「エド.....大丈夫かしら」


私は5つも年下の弟が今日のような寒い夜に外にいると考えると心配でたまらない。なんでも魔力のコントロールが出来るまで入ってこれないらしい、まだ5歳なのにこの寒空の中死んだりしないだろうか。


「先生本当に大丈夫なんでしょうか」


先生の今回の提案を快く了承したものの心配そうに尋ねる父様


「エドワード様は最近やっと聞き分けが良くなってきたと思っていたのですが、今日のエドワード様は目に余るものがありました。一体エドワード様に何があったのかはわかりませんが荒療治が必要だと感じました」


淡々と今回の理由を述べるエリーゼ先生。いつも優しい先生だけに今日の先生は怖い。


「ですが...大丈夫でしょうか、もし何かあったら」


「ええ大丈夫です、見張りにアリスをつけておきましたのであの子なら上手くやってくれるでしょう」


炊事洗濯掃除になんでも完璧にできてしまうメイドのアリス、身体能力も非常に高く気配を隠すのは朝飯前、アリスが五年前この屋敷のメイドとなったときにその異常な身体能力の高さからアリスを怪しむ声も上がったほどだ。しかし、当時の私からしたらアリスはなんでもこなせちゃうカッコイイヒーローみたいな存在だった。


「うむ、アリスなら問題なかろう」


父様もそんなアリスが見ていてくれるならと納得した様子だった

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