第5話

木下ゆいなの面倒と母さんの面倒を交互に看ることになる。

疲れているのか、目が霞む・・・。

木下ゆいなの母親は検査したのだろうか。

ゆいなに聞いてみる。

「君のお母さんは検査したのか?」

「うん・・・、頭に腫瘍があるみたい」

まさか!?あの灰色の虫はそれを指していたのか!

「あなたが言ってくれなかったら、母はあのまま死んでいたかもしれない」

ゆいなは涙を流している。


「あなたはいつから見えていたの?」

突然の質問に僕は戸惑う。

「・・・幼少期だよ」

「私は中学に入ってからすぐかな・・・」

ゆいなの場合は、つい最近となるのか。

「虫が見えてから不気味に思えて誰にも言わなかったし、誰かに言っても信じてもらえないだろうし」

確かに・・・、僕も母さん以外は信じてもらえなかった。

でも、その目で見えるなら救いたい命がある。

大学でも虫は見えている。

そのせいか、人付き合いが上手くいかない事もある。

「伸さんは彼女いないの?」

「いないよ・・・」

彼女か・・・。

実際付き合っていた人はいる。

ただ、その彼女も肺炎で亡くなった・・・。

僕の事をうわ言で言っていたらしい。

その時も見えていたんだ。

白い虫がね。

でも、彼女に検査しろって強く言えなかった。それがだんだん、黒くなっていった時にはもうすでに遅かった。

僕はもう好きな人を失いたくないために、誰とも付き合わないことにしている。

サークルのコンパとか誘われるが、もう誰も失いたくないって思うと気が引けてしまう。



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死虫 卯月レン @426uzuki

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