第3話

ある時、母さんに言ったことがあるんだ。

「母さん、一度検査してもらいなよ」って。

だけど笑いながら首を横に振る。

僕には見えてしまった、あの虫が。

まだボンヤリとしているけど間違いない。


なんとか検査を受けてもらわなければ。

父さんの時はまだ自分が子供だったせいで、救えなかったから。


ー数日後ー

母さんは風邪で倒れた。

なんとか病院に連れていく。

虫は白い、まだ助かる。

検査の結果、胃ガンだった。

単なる風邪だと思っていた母さんはショックを隠せない。

胃ガンでも治療をすれば助かると診断される。

「伸・・・お母さんの体の変化に気づいてたの?まさかね・・・」

母さんに話してみようか、虫の事を。

「実はね、僕には死虫という虫が見えるんだ。父さんの時も、隣の男の子の時も見えたんだ。だけど、誰に言っても信じてもらえなかったよ」

「死虫・・・?!」

母さんは驚いている。そりゃそうだ、僕の頭がおかしいと思われても仕方ない。

「伸にも見えるのね、虫が・・・」

「母さん!?どういうこと?」

母さんはゆっくりと話す。

「昔、私の母・・・お前のお祖母ちゃんが見えていたのよ。当時はその事を話しても信じてもらえなかったんだけど・・・ある日、村の村長さんの病気を当てたことで母は神として崇められたの。それからが大変だったわ・・・色々あって母は死ぬまで神として生きた・・・。私が高校生の時に母は死んだわ。村の村長の息子の病気を当てたあとね」


そんな事が昔、起きていたんだ・・・。

僕の力はお祖母ちゃんの遺伝ということか。

村長の息子が父さんだった。

その父さんも今は居ない・・・。

「伸・・・あなたの力でいろんな人を救いなさい。初めは難しいかもしれないけど」

そんなこと言われたって、この力の使い道がわからない。

「伸、まだ私の体に虫はいる?」

見てみると、虫はいなくなっている。

「いや、もう居ないよ」

「そう、ありがとう」

静かに寝息をたてている。安心したのだろうか。






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