第31話 幼馴染


 リビングに入ると俺以外はみんなそろっていた。

みんな起きるの早いね。俺が遅いのか?


「おはよう」


「兄さん、おはよう」


 昨夜忍び込んできた由紀は普通にしている。

表情も普通だし、特に焦ってもいない。

まぁ、兄妹ならこんなものか。


「純一さん、おはよう。昨夜は良く寝れましたか?」


「ええ、良く眠れました」


「それは良かったわ」


 母さんは着物を着ていない。

普通の服だ。昨日はなんで着物だったんだ?

後で聞いてみるか……。



「純一様、おはようございます。コーヒーと牛乳、どちらに?」


「コーヒーで」


「かしこまりました」


 マリアさんは昨日と同じデザインの服だ。相変わらずメイドをしている。

昨日とはリボンの色が違う位か。普通にしていれば十分可愛いのに、もったいない。


 昨日は俺を襲ってきたのに、今日は普通だ。

朝一でアクションがあると思ったが、特に無い。

いつもこんな感じだと、俺も助かるんだがな。



「純一様、おはようございます。疲れは取れましたか?」


「おかげさまで。体調も良いし、いい感じです」


「それは良かったです」


 レイさんも普通に対応してくれる。

昨日までの騒ぎは何だったんだ?


 やはり女性が複数集まると普通の接し方になるのか?

それとも他に何かあるのか……。


 朝食もそこそこに、普通の会話をしながら終わる。

母さんは午後から仕事、由紀は午前中から友人と出かける予定があるみたいだ。

レイさんは母さんを送迎。そして、マリアさんが家に残るらしい。




 朝食も終わり、俺は自部屋に戻る。

棚には中学校で使っていた教科書がまだある。


 少し復習しておくか。

机に向かい、勉学に励む。数学や国語、理科や英語は問題ない。

一番困ったのが世界史と日本史。

大まかな出来事の年号はあっているものの、歴史上の人物が知らない人になっている。

こ、これは勉強し直しじゃないか?

高校が始まるまでに、何とかしなければ。


 俺は真面目に教科書とにらめっこ。

これでも高校ではそこそ勉強ができる方だったが、この世界の歴史は勉強しなおしだ。



 復習する事小一時間。

うーん、疲れた。



――プルルルル プルルルル


「はい」


『純一様、お客様がお見えです』


 俺に客? まぁ、この世界の友人の記憶はなさそうだが、友人くらいいるだろう。

記憶がないが、そこはしょうがない。


「誰?」


『相原薫(あいはらかおる)さんですが』


 薫! 薫がいるのか! 俺の親友の薫が!

小学校、中学校、高校とずっと一緒につるんだ俺の親友!


 この世界でも俺の知っている奴がいるのか!

助かった! 早く薫に会いたい!


「僕の部屋に通してほしい!」


『いいのですか?』


「いい! 問題ない!」


『かしこまりました。記憶の事はお伝えしますか?』


「ああ、事前に話しておいても問題ない」


『かしこまりました。お話してから、お通しいたしますね』


 嬉しい! 早く来ないかな!

話したい事が山のようにある!





 待つ事数分。




――コンコン


 薫が来た! 待ってたぜ!

早くこの世界について色々と教えてくれ!



 俺は急いで扉をあける。


「薫! 会たかっ、た?」


 誰? 俺の知っている薫じゃない!

目の前にはピンクの甘カワ系の服を身に包み、眼帯をしている女の子。

左手にはボロボロの包帯を巻いている。

髪は赤く、ポニーテールに。そして、深紅の大きなリボンがひときわ目立っている。

背は俺より少し低いが、大人っぽい顔つきをしている。

そして、大変申し訳ないが胸は強調されていない。非常に残念だ。


 って、俺の知っている薫はもっとスポーツマンだ!

角刈りの、がっちり系だぞ! なんだ、本当に薫か?

いつから女の子に!


「あんたが私に会いたいって珍しいわね」


「あ、ああ。えっと、薫?」


「うわっ! 本当だ、あんた記憶、飛んでるんだね」


「あんたって……、僕は純一って名前があるんだけど」


「一人称まで変ってる。とりあえず、中に入るわよ」


「お、おお」


 何だこいつ。なれなれしい。

話をしていいてちょっとイライラする。


 目の前の甘カワ服女はベッドに座り、俺を見ている。

なぜか、ニヤニヤしながら足を組んでいる。


「純一の一人称は『俺様』。そして、私の事は『お前』と呼ぶわ」


「そ、そうなんだ。君の名前は?」


「今さら自己紹介? めんどいわね。私は薫。相原薫よ。あんたの幼馴染」


「本当に相原薫なのか?」


「しつこいわね。そんなにしつこいと女の子にもてないわよ」


 何だこの違和感。今まで会った女性とは雰囲気も対応も全てが違う。

こいつ、何か変だ。


「薫は女か?」


 ベッドから立ち上がり、薫は俺の目の前までゆっくりと歩いてくる。

そして、右手を握りしめ、大きく振りかぶり俺の右頬に一撃を決める。


――バチコーン!


 あうちっ! い、痛いじゃないか!


「薫、痛い。なぜ殴る?」


「痛い? じゃぁ、これは夢ではないわね。私は生まれた時から女よ?」


「ホントに?」


「はぁ……。今さらだけど、証拠見る?」


 薫はスカートの中に両手を入れ、目の前で下着を脱ぎ、床に落とす。


 おおおおおぅ! ちょ! え? まじすか!



「あんた、何、動揺しているの?」


「え、だって、ほら、その、あれだよあれ……」


 あかん、動揺しまくりだ。

目の前の女の子が生脱ぎ。水色の可愛い下着が俺の部屋に落ちている。

水色の可愛い下着が俺の部屋に落ちている。

大切な事なので二度言いました。


「証拠、見たいんじゃないの?」


「み、見たいけど! 見たいけど……」


 薫は両手で、スカートを少しずつまくり上げ、膝下にあった裾が、徐々に上がっていく。

スカートがゆっくりと上がっていき、ひざ上まで来る。


 目が離せない。見ちゃいけない気がするけど、目が離せない。

見てもいいの? お金取られないよね?



 太ももが半分位見えている。

すらっとした太ももで、肌も白く、美しい。


 あと、あと少しで……。


「ほら、よく見なさいよ。もっと、近寄ってもいいわよ?」


 俺は少しずつ、薫に近寄って行った……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る