第7話 結婚を申し込まれた!


 しばらく三人で話しこむ。

どうやら俺の母親で間違いはなさそうだが、俺にその記憶はない。


「主治医として言わせてもらうわ。記憶喪失ね」


「そ、そんな……、純一さんの記憶は戻るの?」


「わかりません。普段の生活をすれば、徐々に戻る事もありますが、戻らない事も……」


「僕は大丈夫なので、そろそろ服を着てもいいですか?」


 さすがにパンツ一丁はそろそろ何とかしたい。

心なしか母さんの目もさっきから俺の裸体を舐めるように見ている。

そして、二人とも俺の局部をときたま凝視している。


 いそいそと服を着て、ベッドに座り込む。

やっと普通の服が着れた。落ち着く……。


「北村さんは普段の生活をした方がよさそうですね」


「わかりました。今日退院して、様子をみてみます」


「じゃぁ、僕は母さんと家に帰れるんですね?」


「そうね。でも週一では絶対に通院してくださいね」


「わかりました。母さん帰ろう」


「あの、先生。記憶喪失になると性格も変わるのでしょうか?」


「可能性はありますね? なぜですか?」


「純一さんはもっと乱暴で、言葉使いもひどかったんです。こんなにやさしくはありません」


 おーい。なんか俺ひどいこと言われてないか?

いたって普通の言葉使いだし、態度も普通ですが?

むしろ、ここに居る看護師の方や主治医の方の方が乱暴だと思いますよ?


「あり得ますね。記憶の回復と共に、性格や態度も元に戻ると思いますよ」


「そうですか。何か相談したいことがあったら連絡します」


「はい。ところで、今日から義理母(おかあさん)とお呼びしてよろしいでしょうか?」


「それはお断りします。この子の結婚相手はこの子が選びますので」


「そうですか……。北村さん、良かったら私と結婚してください!」


「はい? なぜそんな事に?」


「だって、北村さんは婚約者まだいないですよね? リングしていないし」


 確かに指輪はしていない。

指輪をしていないと何かあるのか?


「純一さんはまだ十五歳です。十六歳になったら徐々に結婚していくと思いますよ」


 は? 十六で結婚? この二人の会話にもついていけない。

母さんは美人になったし、主治医の人に結婚申し込まれるし。

頭が痛くなる。 早く自宅のベッドで寝たい……。

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