第6話 母さんが美人になってる!


 風呂も入り、部屋に一人ベットに寝転ぶ。

新しい服はなぜがスーツだ。それもきらびやかなスーツ。

まるでアイドルが着ていそうなキラキラしたスーツ。

激しく脱ぎ捨てたい。

しかし、他に白衣しかない俺は仕方なくアイドルスーツを着る。



コンコン



「入りますよー」


俺と目が合った真奈美さんはダッシュで俺の隣に来る。


「北村さん、素敵よ。思った通りの感じね。パーフェクトだわ」


「えっと、すいません。申し訳ないのですが、ジーパンと白のシャツ下さい」


 少し残念そうな顔をする真奈美さん。

しゅんとした顔も可愛い。抱きしめたくなるが、それはできない。

なぜかって? 俺がシャイボーイだからさ。


「なぜ? この服は嫌?」


「はい。こんな格好で外を歩けませんし、今から母が来るのです。普通の服がいいです」


「わかったわ。残念だけど仕方ないわね」


 真奈美さんは病室あるクローゼットからジーパンと白いシャツを取り出し、俺に渡す。


 ちょ! ここにあったんですか! だったら初めからそれを出してくださいよ!


「これでいいかしら?」


「はい。これがいいです」


 俺はスーツを脱ぎ、トランクス一枚になる。


「おっふぁ! 北村さん! 急に脱がないで!」


「え? 別に大したことじゃ……」


「わ、私の理性が崩れりゅ前に、は、早く服をきちぇくだしゃい」


 真奈美さんのろれつが回っていない。

どうしたんだ? 急に具合でも悪くなったのか?


 俺はトランクス一枚のまま、真奈美さんに近寄り、肩に手を置く。


「はひゅー! もう、もうダメです。ごめんなさい!」


 真奈美さんが俺に抱き着いてきた。

首元に息がかかる。そして、胸が俺の鳩尾あたりに押し付けられる。


 おっふ。これはまずい。俺の直径四四マグナムが起きてしまう。

若干腰を引き、怪しまれないように後ろに下がる。


 しかし、真奈美さんは俺を抱きしめ、離してくれない。

そのままベッドに押し倒され、マウントポジションを取られる。


「ま、真奈美さん?」


「はぁはぁ、北村さんが、北村さんが悪いんですぅ!」


 そのまま俺の頬を両手でつかみ、顔をゆっくりと近づけてくる。

逃げられない。このままでは唇が重なってしまう……。


―― ぴしゃーん!


 扉が勢いよく開かれる。



「私の息子にナニをしてるのかしら?」


 部屋に入ってきた女性をは着物を着ている。

髪を結っており、とても清楚な女性だ。誰?


「も、申し訳ありません! 目の前で裸になった北村さんを見たら、理性が飛んでしまい……」


「そう、それでは仕方ない事ね。今回は大目にみます」


「ありがとうございます!」


「純一さん。とても心配したのよ。まったく連絡が取れなくて」


 着物を着た清楚な女性。顔立ちも美しく、真っ白な肌に吸い込まれそうになる。

年も若い。まだ二十代前半あろうか?


「えっと、どちら様で?」


 たった一言話しただけで、目の前の女性は涙を流す。


「今まで『お前』としか呼んでくれなかったのに、今回は『どちら様』なの?」


 涙を流しながら俺に話しかけてくる。


「北村さん、実のお母さんに向かってそれはちょっと……」


「え? 母さん?」


 俺の知っている母さんじゃない。母さんはこんな美人じゃない。

もっとおばちゃんだ。ザかーちゃんのようなイメージだったはず。


「純一さん、私の事わからないの?」


「ごめんなさい。本当にあなたが僕の母さんですか?」


 誰も話さなくなり沈黙になる。

静かに時間が流れる……。



「えっと、北村さんはお母さんの事覚ええないのかな?」


「はい。僕はこの女性に初めて会いました」


「そ、そんな……。純一さん、それは本当なの?」


 本当です。ふーあーゆー。あなたは誰ですか?


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