第4話 ボディーガード


 芸人のような二人がいなくなり暇になる。

暇だな、よし病院の中を散策しよう!


 服は白衣のような物のまま病室の扉を開け廊下にでる。

ん? 何か違和感を感じる。


 ふと隣を見ると、ごっつい女性が立っている。

俺の事を凝視したかと思うとまた正面を向く。


 筋肉質のスレンダーマッチョだ。美しい筋肉に金髪。肌もめっちゃ白い。外国の方だろうか?。

黒い上下のスーツにサングラス。某映画に出てくるエージェントのようだ。

腰には警棒? と無線を装備しいかにもボディーガードっぽい。

顔は整っており、髪を首の後ろでお団子にしている。



「こ、こんにちわ」


 恐る恐る声をかけてみる。


「……」


 返事がない。ただの屍(しかばね)では無いのに、返事がない。

でもよく見ると正面を見ながら、目だけは俺を追っている。

そして、鼻の穴が大きくなり、クンカクンカしているっポイ。


「えっと、ちょっとだけ部屋を出ますね」


 一言だけ話かけ、そのまま廊下を歩く。



 真後ろからはぁはぁ声がする。

一歩歩くと真後ろから一歩俺に近づいてくる足音。



 振り返ると彼女がいた。

近い。非常に近い。接近しすぎだ!


「あ、あのー、何か?」


「私はあなたのボディーガード。退院するまであなたを守る義務があるの」


「へ? 僕は命を狙われているんですか?」


「あなたは男性よ? しかも若いし指輪もつけていない。非常に危険よ」


 さっきの二人と言い、まったく意味が分からない。

まぁ、守ってくれるならそれでもいいか。


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 お礼を言うたえ、頭を下げた途端、突然抱きしめられた。

おおぅ! な、なんだ! 羽交い絞めにされたぞ!

なんかフンフンしている! た、助けてー!


「いいわ。あなたいい筋肉を持っているわね」


 首に女性の息がかかる。あ、ちょっと首元を舐められた気がした。

や、やめてー! 金髪美人に責められるのも夢だったけど、なんかちがーう!


「あ、あの、すいません!」


 女性は俺をぎゅーと抱き着きながら頬すりしてくる。

あ、この人のはだめっちゃ気持ちいかも。すべすべだー。

いやいや、それより、この状況を何とかせねば。


「すいません! トイレに行きたいんですけど!」


「っは! 申し訳ありません。あまりにもいい匂いだったので、我を忘れてしましまいた」


 そんないい匂いのシャンプーとか使ったけ? そもそも俺は二日間風呂にも入っていない気がする。

風呂入りたい。お腹すいた。普通の服が着たい。後でなんとかしてもらおう。



 俺がトイレに入り、用を足す。

手を洗い、ふと鏡を見る。 



 え? な、何だこれは……。

鏡の中には俺の知っている奴じゃなかった。

正確には今の年齢の俺じゃなかった。


 多分三年位若くなっている。ど、どうしてこうなった?

背も少し低くなっている気がするし、若返った?



 何かおかしい。そうだ、新聞。 新聞を読もう。

何か分かるかもしれない。


 あわててトイレを出て、さっきの女性に新聞が見たいことを伝えると、購買を案内してくれる。

購買までは少し距離があるが、ここでも違和感を感じる。


 男性とすれ違わない。全員女性ばっかり。

そして、その女性たちはもれなく俺を凝視してくる。

時たまフラフラ近寄ってくる女性達を、ボディーガードの方が追い払っている。


 俺はいったい何をしたんだ? ドキドキしながら購買で新聞を手に取る。

あ、俺財布もないや。


「すいません、新聞ちょっとだけ見てもいいですか?」


 購買のおねーさんに声をかける。


「ちょっとだけじゃなく、ずっと見ていていいですよ! なんなら私がプレゼントします!」


 何だこの反応。新聞を初見の人にプレゼント?

清楚な感じの方で、美人さんに言われると気分は悪くない。

いままでそんな事言われたこと無かったのに。ちょっと嬉しいぞ!


「わ、私も新聞プレゼントしますよ!」


「ちょっとあなた、抜け駆けしないでよ! 私が先に目を付けたのよ!」


「私は新聞以外に雑誌もつけるわ!」


「じゃぁ私はコーヒーとチョコもつけるわ!」


「ふん! さらにカップめんとアイスもつけるわ!」


「っは! 私は着替え用の下着をつけるわ!」


 な、なんの話をしている? どんどんヒートアップしてくぞ?

お、俺は知らない。なにも頼んでいないからな!



 新聞を見ると特に変った記事は書かれていない。

一面、地方面、スポーツ面、番組欄に四コマ漫画。


 ん? 俺の知らない選手や議員がいるな。

あれ? この事件の犯人もあっちの犯人も女性だ。

痴漢容疑で捕まったのも女性。

出会いサイト運営で捕まったのも女性。

女性ばかり逮捕されている。そ、そんな馬鹿な。 



 日付をみてさらに驚く。



 そんな馬鹿な。




 日付はちょうど三年前。




 もし、この日付が正しいのであればこの春から俺は高校生だ。

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