第3話 ペンの使い方

「北村さん。あなたの身元がまだ確認とれていないの」


 主治医の近藤さんが俺の隣に座って話し始める。

鈴木さんは近藤さんの隣で俺を凝視しながら、はぁはぁしている。


 何か非常に狙われている気がする。

まるで肉食獣に狙われたウサギの気分だ。


「運ばれたとき、北村さんはどこかの学校の制服だったけど、その制服の学校はこの辺には無いのよ」


「へ? だって、僕は学校でから運ばれたんじゃ?」


「そう。学校から運ばれたんだけど、その学校の制服ではないのよ」


「どういう事でしょうか?」


「北村さんの持つ身分証明書は何も無し。学校ともかかわりなし。救急車を呼んだのも誰なのか不明」


「そ、そんな。えっと、紙とペンを貸してもらえますか?」


 そうつぶやいた瞬間、鈴木さんの懐からものすごい速さでメモ用紙とペンが出てきた。

何という速さでしょう。まるで予想していたかのような速さです。


「是非これを! 使い終わったら必ずそのペンは私に返してくださいね!」


 何か念を押されたが気にしない。

そのペンを誰がどのように使うかはその人の自由だ。


「ここに連絡してみて下さい。両親と連絡が取れるはずです」


 俺は近藤さんに親の名前と住所、連絡先。ついでに自分の名前、住所、連絡先、学校など一通り書いて手渡した。


「北村さんの両親の連絡先……。ほしいほしいほしいほしい」


「里奈、ちょっと静かに。北村さん、あとでここに連絡してみるわね」


 メモを渡した直後、手に持っていたペンを鈴木さんが俺の手から奪い取る。

そして、はぁはぁしながら舐め始めた。

うわぁ、引きますよ。 いったい何がどうなっているんですか?


「里奈。本人の目の前よ。少しは自粛しなさい」


「ご、ごめんなさい。男性の直接触ったペンなんて、今後一生手に入らないかと思ったらつい……」


「里奈、そろそろ席を外したら? あなたも忙しいでしょ? そのペンのせいで」


 鈴木さんは頬を赤くしながらもじもじしている。

いったいナニが忙しいのだろうか?


「ええ、私も忙しくなったわ。先にステーションに戻るわね」


 いそいそと鈴木さんは席を外す。

そして、近藤さんもベッドから立ち、扉に向かう。

部屋を出るのかと思ったらなぜか鍵をかけた。


「北村さん。主治医として、一度体を見せてもらうわね」


 俺の隣に座り、両手を肩に乗せてくる。

そして、俺の着ていた白衣っぽい服を脱がし、上半身裸にされる。


 舐めるように見てくる近藤さん。

何だか目が少しイってる気がする。


「これは主治医としての確認よ。痛かったり、何か違和感を感じたら言ってね」


「は、はい」


 近藤さんは指先で肩からわき、胸、お腹となぞるように触ってくる。

くすぐったくてしょうがない。


「こ、近藤さん?」


「真奈美って呼んで」


「えっと、真奈美さん?」


「何かしら?」


「これは何の検査ですか?」


「北村さんの体が正常に働いているかの検査よ。後ろを向いて」


 言われるがまま後ろを向く。

すると、なぜか真奈美さんが後ろから抱き着いてくる。

首元に息が当たり、ゾクソクする。胸の感触も背中に伝わってくる。

ああん。いやん。俺のマグナムが火を噴いてしまうわ……


 真奈美さんの手はそのまま俺の腹筋を触りはじめる。

首元にかかる息が少し荒くなってきた。


「ま、真奈美さん?」


「ご、ごめんなさい! 検査しすぎですね! きょ、今日はここまでにしましょう!」


 慌てて部屋を出ていく真奈美さん。

上半身はだけた状態で放置されてしまった。


 いったい何なんだ? 二人の様子が変だ?

なんで俺ははぁはぁされたり、体をまさぐられた?


 何かが変だ……

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