第2話 里奈と真奈美


 目が覚める。あ、俺生きてる! 良かった!

白いベッドに寝ている。部屋を見渡すが見慣れない部屋だ。


 へ? ここはどこ? 私は誰? って、自分の事は分かっている。


 俺は北村純一(きたむらじゅんいち)。十八歳。

今日高校を卒業し、今春より大学に進学する。

身長百七十八センチ。体重六十五キロ。

ややハンサムで細マッチョだ!(自分ではそう思っている)


 髪はさわやか系で普段はワックスで整えている。

趣味はツーリングに料理。裁縫も少々。スポーツは全般的になんでもできるんだな!

まぁ、泳げないところはしょうがないとして。


 さて、自分の事は確認できた。しっかり記憶もある、良かった。

立ち上がろうとしたらなぜか白衣のような服を着ている。

何だこれ? 俺は入院患者か!


 ……ここは病院か?


 部屋には俺一人。ベッドの枕元にはひも付きのブザー。

そして、ベッドの隣にはワンドア冷蔵庫にテレビがある。


 もしかして俺は階段から落ちて運ばれてきたのか?

きっとそうだ。彼女が救急車を呼んでくれたんだな!

何としても彼女の連絡先を聞かなければ! あと名前も!



――コンコン


「入りますよー」



 女性の声がする。



「はい、あいてまーす」



 俺も答え、扉が開く。そこには天使のような看護師の方が!

セミロングの髪に、大きな瞳。恐らく二十代前半!

胸もバイーンと強調され、太もももむちっとしており、ご馳走様です!



「お、起きていたんですね!」


「はい、さっき目が覚めました」


 看護師の女性は俺に近寄ってきて、肩や腕、腰、太ももなどまさぐっている。

えっと、体の確認をしているのかな?

何か息が少し荒いような気がするが……。



「えっと、看護師さん?」


「っは! ご、ごめんなさい。初めて男性の担当になったので、つい……」


 

 何かよく分からない事を言っている。まぁ、気にしなくていいだろう。



「えっと、僕がここに居るのは運ばれたからですか?」


「そ、そうです。緊急搬送されてきました。二日前に」


「ふ、二日! そんな前なんですか!?」


「そうですよ。二日間、ずっと寝たままでした」


「僕は大丈夫なんですか?」


「今の所、何ともないと思いますよ?」


「よ、良かった。いつ退院出来ますか?」


「まだ、検査の途中なのと、あなたの身元確認がまだできていないの」


「へ? それは何でですか?」


「あなたの身分を確認できるものが何もないのよ」


 そ、そんな馬鹿な。俺は学校の階段で落ちたんだぞ?

学校でも、例の彼女でも俺の身分位すぐに確認できるだろ?



「えっと、名前は北村純一です」


「わ、私は鈴木里奈(すずきりな)です。よろしくお願いします!」



 なぜか、顔を赤くしながら俺に話しかけてくる。

そして、俺が寝ているベッドへ腰をおろし、なぜが顔を近づけてくる。


 可愛い子に近寄ってもらえるのは非常に嬉しいが、近すぎる。

あと数センチで顔と顔がぶつかりますよ?


「あ、あの? 顔が近いですよ?」


「ごめんなさい! ご、ご馳走様です!」


 鈴木さんの両手が俺の両頬を掴み、俺は顔を動かせなくなった。


 ちょー! 待って! 待ってくれ!

後数ミリで唇が重なりそうなとき、急に扉が開く音がする。



ピシャーーン!



 ものすごい音で扉が開いた。壊れてないかな?


「こらー! 里奈! 何一人でしているのよ! 抜け駆けは禁止って言ったでしょ!」


 えっと、この人の言っている事も良くわからない。

急に入ってきた女性は黒のタイトスカートに白衣。そして腰までの真っ黒なロングヘアー。

やや釣り目で顔の輪郭がしっかりとしている。

年齢は二十代半ばくらいだろうか?

鈴木さんが可愛いなら、この女性は美人という言葉が似合いそうだ。


「ま、真奈美! なんでここに居るの! 巡回はもう少し後のはずよ!」


「里奈がいなくなったから、怪しいと思って先に来たのよ! 正解だったわね!」


 なんだ? この二人は知り合いか?


「初めまして! 私は近藤真奈美(こんどうまなみ)。あなたの主治医よ」


 部屋に入ったかと思うと、ダッシュで鈴木さんの腰を掴み後方へ投げ飛ばした。

その勢いで転んだ鈴木さんは、紺と白のしましま下着が丸見えになっている。


 俺は思わず見てしまったが、そのあと鈴木さんとすぐに目が合う。

あ、見てるのばれたな、完全に。でも、不可応力ですよね?



「き、北村さんに見られた! もう北村さんに嫁ぐしかない!」


 顔を赤くしながら、俺の隣にいる近藤さんを押しのけ、俺に抱き着いてくる。


「こ、こら! 迷惑でしょ! やめなさい!」


「こ、このチャンス逃してたまるか……」


「だ、だから、はしたないって、言ってるでしょ!」


 再び鈴木さんは投げ飛ばされる。ここは病院か? それともお笑いの劇場か? 


「すいません。状況は良くわからないのですが、僕はこの後どうなるんですか?」


 そろそろ本題に入りたい。俺は普通の学生で、普通の男だ。

早く退院して、彼女を作りたいだけなんだが。

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