第102話目 交流75

 直人がゲストページに入れてくれた三枚のNAOの写真は、確かに少しずつメイクが違っていた。そのうちの2枚のNAOの顔が違うことには、実は気付いていた。去年の活動の病院のHPで見たのと、以前ブログの記事の中で見たNAOの目の周りのメイクの違いには気づいていたけれど、それほど大きな違いではなかったので、いわゆる化粧の仕方の違いくらいにしか思っていなかったが、意図してたことかと、もう一枚の写真でわかった。


 その一枚は、二枚と違って顔の色自体が違っていた。


 顔の全体を白く塗ってメイクしている顔と、ベースが肌色でその上に白を基調としたメイクをしているもので、そちらの方は初めて目にしたNAOだ。というか、ベースが肌色なだけあって、ああ、真崎先生だ……そう、わかった。もしかしたら、肌色ベースだと生徒に気付かれるかもしれないと思って止めたのかもしれない。


 『わっ……ビックリした。肌色のベースのNAOさん、これは素顔に近いんじゃないですか?なんか、ちょっと、……ドキッてしちゃった(笑)病院での写真とか、ブログに載せてた写真は顔が白かったでしょ?その使い分けって、どうやって決めているの?それと、集合写真を見せてくれてありがとう。うん、言われてよーく見てみたら、みなさんぞれぞれ違うんだね。同じように見えてもどこかしら変化を加えているんだね。そういうこと聞いてからクラウンフェスタでクラウンさんたちに会えるって、ラッキーかも。じっくり見て来られるもんね(笑)NAOさんの顔も、じっくり見ちゃお(笑)』


 『みんなのメイクの違いに気付いてくれたんだね。そう、だからね、研修では自分の個性が出るようにするか、しっかり隠しきるか、そういう気持ちの面についても話をしながら、みんなにメイクの仕方とかね、教えるんだ。それと、NAOのメイクはね、愛さんがビックリしてくれたように、肌色のベースだと現実の顔が見え隠れしちゃう気がしてね、ここんとこは白ベースでやっているんだ。……それでね、肌色ベースの顔は愛さんに見せようかどうか、ちょっと悩んだんだ。悩んだっていうか……素顔に近くて、愛さんがどう思うか少しだけ不安だった』


 不安?……そっか。


 愛が直人の素顔に近づき、それが好みの顔じゃなかったらとか、そういうこと考えたのだろう。そういう気持ちは年齢とか立場とか、そういうことは関係ないのだろう。愛美は、自分が生徒だと気付かれないために顔を知られたくないと思っているが、もし生徒とかそういう部分を抜きにしても、自分の顔が直人の好みかどうかもわからないことは自分も不安だ。なんだか可愛い。直人が可愛い。


 『直人さん、不安ですか?私も同じです。私の顔を知った直人さんがどう思うのか、すっごく不安。よく、好きになるのに顔なんか関係ないとか、そういうこと聞くし、確かにそうだなとも思うんです。顔がカッコいいから好きとか、そういうの相手がアイドルならそういうこともあるけど、大事なのは中の部分っていうのは思っています。どんなカッコいい人でも性格が自分とは合わなければ異性として好きという感情が湧かないと思うし……と、頭ではわかっていても、やっぱ一番最初に目に入るのは顔だし、少しでも良く思われたいです。私の顔も、直人さんの好みじゃなかったら……どうしよう。それを考えだしたら私は直人さんの前には行けない。怖いから』


 同じ気持ちだと伝えた。ちゃんと直人の顔を知っている自分より、私をを知らない直人の方が、その不安は大きいのかもしれない。というか、顔がわかって交流している私は、ちゃんと真崎直人という人に想いを寄せている。では、直人さんは……


 わたしを知らない直人さんの想いの方が、本当は誰に向いているのか、愛に向いている想いを愛美である私に向けてくれるか……それは、私の方が本当の不安は大きいことに、急に胸の鼓動が始まり、息苦しいほど泣きたくなった。


 私は真崎直人さんが好き。


 じゃあ、直人さんは……

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