第73話目 交流54 

 えっ、増本にも目が赤かったこと話してたのか……しかも今日一日、そんな感じで増本に気にされていたことをMASATOのコメントから知り、全く気付かなかった増本の気遣いを知り、失敗したなあと思った。


 それにしてもだ。今朝、真崎先生と校門で顔を合わせたこと、振り向きざまに目が合ったこと、ちゃんと真崎先生もそれを意識していたことを知り、喜びと顔のほてりを感じた。意図したわけではないけれど、自分のことに意識が向くように話を持って行けたこと、それが成功していたことを知り、策略成功という気持ちもそこにあり、なんだか嬉しさで顔は綻んだ。


 意図したわけではないけど……いや、意図したことだった。


 増本にまで気にかけられていたことは想定外だったが、真崎先生に気にしてもらえていいたことは嬉しかったので、Tさんが聞いたらきっと嬉しかったと思いますよ……なんてコメントに書いてしまった。


 『そうですね、病院での活動については、また記事にさせてもらいますね。そういえば、去年の活動が病院のホームページに載っているんです。もしよかったら覗いてみてください。今年も同じような活動にはなると思うんですけどね。それと、Tさんのことですけど、実はディズニーで見かけたこと、Tさんの担任にも今日、話したんです。それでその時に髪は長くて、1週間も経たず短くなったことで、担任も気にかけるようにしてくれると言ってくれてるので、ちょっと安心です(笑)そうそう、GWの自分個人の予定ですけどね、毎年この活動をしているので泊りがけの旅行ってわけにはいかないんですけど、4日にね、東京にでも行ってこようかなと思ってるんです。実はお笑いが好きでして、新喜劇でも観てこようかと(笑)』


 げっ、増本にディズニーで見かけたこと話しちゃったのか。


 愛美は自分の知らないところで担任が自分の行動を知っているということに、一抹の不満を感じたが、よく考えると自分の同じことをしているではないかと、真崎先生が知らないところで、AIがMASATOと交流を持っている今この時間のことを思うと、やはり多少の後ろめたさを感じた。


 だからこそだ。愛美がAIだということは、絶対に真崎先生に知られてはいけない。真崎先生の私生活やその感情を生徒である愛美が知っているなどということは、あってはならないのだ。バレたらAIに対する真崎先生の、MASATOの感情は180度ひっくり返る。


 『MASATOさん、病院のホームページを見てきました。子どもたちの向こうでバルーンアートを作っているNAOさん。子どもたちの顔はNAOさんの方を向いているのに、絶対に笑顔でワクワクな顔をしてNAOさんの手元を見ているんだとわかるような写真ですね。なんだかすごくいいです、いい一枚ですね。真っ白い顔に目の周りを青くして、赤いお鼻で笑顔メイクで顔は笑顔なんだけど、その口元が真剣なのが見て取れて、なんだか……可愛いです(笑)じゃあ今年の様子もホームページで見ることが出来ますね。楽しみです。MASATOさんのGWの4日は東京ですか。新喜劇がお好きなんですね。私は一度も直に観たことはないんですが、楽しそうですね。観てみたいな(笑)』


 病院のホームぺージは教わらなくてもとっくに見て知っていた。でも、今見てきたようにコメントを書いた。今年もホームページの載るのだろうから、これでそこで見せてもらうつもりだという意図は伝わったはずだ。が、愛美は何とか直接それを見ることはできないかと考えはじめていた。


 『見てくれてありがとうございます。病院での活動は、だいたいあんな感じでやっています。今年も一緒のメンバーは去年と同じで、ジャグリングのジャス君と、手品のトランプ君なんですけど、手品のトランプ君はね、クラウン名をトランプにしちゃったから、次はトランプの手品をやりますなんて言うと、さっきもトランプの手品だったよなんてツッコミ入れられたりしてね(笑)ややこしいからクラウン名を変えようかななんて言ってるんですよ(笑)それから……えっと、口元真剣で可愛いなんて言われると……恥ずかしいです、照れます(笑)でも、そんなところまでちゃんと見てもらえて気付いてもらえたこと、嬉しいです。バルーンアートやってるときは、つい真剣な感じになってしまうんです(笑)』


 ジャス君とトランプ君か。トランプ君がトランプの手品って、確かに紛らわしい。でも、そんな話題もしてもらえるって、やはり嬉しい。


 『トランプ君がトランプの手品は、確かに紛らわしいですね(笑)でもその紛らわしさも笑いを誘ってくれて、それもアリかもしれませんね。NAOさん、バルーンアートを作るときは真剣になるんですね。そういうとこも笑顔メイクに騙されちゃいますよね(笑)笑ってるって思えるんですもん。と、なんかこれだと嫌な言い方に聞こえちゃうかのな?実は私ね、子供の頃に両親に連れられてサーカスを見たことがあるんです。その時に、ピエロさん……と、クラウンさんっていうんでしょうけど、その頃にはピエロさんだと思ってて、そのピエロさんがね、客席を回って子どもたちにちょっかい出してたんですけど、その時に私の横に座って私の肩をツンツンしたり、顔を向けるとおどけてみせて……楽しませてくれてたんでしょうけど、私はただただ怖かったんです。だって……ピエロさんが笑ってなかったから。顔は笑ってるのに、すっごく怖くて……早く向こうへ行って!と思ったんだけど、どういうわけか横に座ったままサーカス観始めて、だからね、サーカスの思い出って、ピエロさんが怖かったこと一色になってます(笑)』

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