第72話目 交流53 MASATO

 『AIさん、こんばんは。えっと、……ただいま。昨日は夜遅くに返事を入れてくれてありがとうございました。話せると思っていなかったので嬉しかったです。早速だけどね、昨日の会合でGWのクリニクラウンの活動の詳細が出たので書きますね。まず29日は津田市で、3日が国山市、5日が藤崎市で、それぞれの市立病院で14時からです。気が向いたら会いに来てください……と言いたいところですけど、やはり病院なのでね、なかなかそう言えないところが辛いところです(笑)一応ね、面会時間内のことなので、病院内にいる人なら広場のだけは誰でも観ることが出来ますよ。あとね、そういうところにも来られない子の部屋も回ることになっています。少しの時間だけど、楽しんでもらえたらなぁって思っています。……それと、


 AIへのゲストページにこれだけ書いて投稿しようとして、ふと今朝の光景が思い出され、書いておこうか止めようか、う~んと2、3拍悩んで、続けた。


 今朝のことなんだけれどね、あの髪を切った生徒のことなんだけど、う~んと、髪を切った子とか階段で会った子とか、ちょっと言い回しが混乱しそうなので……Tさんね、その子を今朝校門で見かけたんだけど、なんか……目が赤かったんだよね。気にして見てたから気づいたってこともあるんだけど、髪のこともあったし気になってね……それでTさんの担任に、そういえば金曜に話したあの子をさっき見かけたんだけど、なんか目が赤かったんですよね……と、Tさんの目が赤かったことを耳に入れておいたんだ。Tさんの担任とはね、一緒にサーフィンに行く仲で、親しくしているのでそういうことも話しやすいってこともあったんだけどね』


 直人は今朝のその光景を思い浮かべ、つい気になって目で追っていたため、寺井愛美が振り返ったとき、偶然にも目が合ってしまい、おっ……と思ったその瞬間の気まずさを思い浮かべ、苦笑した。


 それにしてもだ。あの赤い目はやはり気になる。目の周辺が腫れぼったく見えていたのも気になるし、担任の増本に話したことで、増本も気にはしていたのかもしれないが、今日1日特に変わった様子はないということだったので、まあ大丈夫なのだろうとは思うが……あれは、泣き腫らした目ではないのだろうか……


 AIさんと寺井愛美の話をしたせいで、どうも気になってしまうではないか。AIさんと会話するようになって、彼女の話を何度かしたせいもあって、それで気にしているだけなのだが。と、そこにもAIさんとの会話の種を探そうとしているのだけなのだが。


 『MASATOさん、おかえりなさい。GWの予定を教えてくださってありがとうございます。クリニクラウンの活動が忙しそうですね。お休みにご自分の遊びの予定はないのですか?ボランティアでそれだけの活動をするって、偉いなって思います。病院内にいるならば誰でも観ることが出来るんですね。……と、つい誰か入院している知り合いはいないか考えてしまいました(笑)さすがにお見舞い相手がいないのに病院い行くのは気が引けてしまいますね(笑)またどんな活動をしてきたのか聞かせてくださいね。それから、Tさん……ですか、目がそんなに赤く腫れていました?それは気になりますね。でも担任の先生にも気をつけるように口添えしたことだし、きっと気にかけてくれているでしょう。そんなふうに心配してもらえてるってTさんが聞いたら……ちょっと恥ずかしくて、ちょっと嬉しいかもしれませんね。心配してくれる人がいるって、有り難いことですもんね。じゃあ明日も見かけることが出来るといいですね(笑)』


 やっぱり病院に来るのは無理だよな。直人はその言葉を読み、わかってはいたことだけれど、GWにAIと会うことはできないんだと思い、多少ガッカリな気持ちもあった。やはり気になる。AIさんがどんな人なのか、気になる。


 さて、どう返事を返そう。直人は放課後の増本とのやり取りを思い浮かべた。


「真崎先生、ちょっといいですか?今朝の件ですが……」


そう声をかけられ、増本の指差す給湯室に向かうと、「コーヒーでも」という増本と共に、供用費の中から備えられているステックタイプのコーヒーと紅茶の中から、増本はカフェオレ、直人は無糖のコーヒーを選びそれぞれ淹れると、そこに置いてある椅子に座り「一服一服」という増本の掛け声で一口飲むと、ふーっと息をついた。


「寺井のことだけど、今日一日……といっても今日は私の授業は1時間しかなくて、あとは朝と帰りの様子と、まあ、時々教室を覗いたときの様子では、特に気になるところはなかったかな。確かに目は赤いし腫れぼったかったけど、どちらかというと気になったのは、眠そうだなということかな。まあ、泣くようなことがあって眠れなかったのか、ただ寝不足かはわからないけど、まあ、でも腫れぼったい赤さだから、泣いてたと言わればそうかもしれんが、友達とじゃれてる様子もいつもと変わらないし、まあ、大丈夫じゃないかな。引き続き気をつけて見るようにはするよ」


「すみません。なんか余計な気遣いさせるようなこと言ってしまいました。寺井さんが髪が長いままだったら多少目が赤くても気にも留めなかったと思うんですけど、たまたま長い髪のときに目にしていて、いきなり短かったんで気になってしまって。……というのも、実は話してなかったんですけど、この前のディズニーで、偶然寺井さんを見かけたんです。その時はまだ長くて、つい一週間ほど前には長かった髪がいきなり短くて、この間、何かあったのかなと思って気になったんです。まあ、そこまで気にすることでもないかもしれませんけど」


「ああ、そうなの?ディズニーで見かけたんだ。土曜に長くて金曜に短いとなると、そりゃ確かに気になるよな。まあ、気にするようにはしていくよ」


 そんなやり取りを思い出し、コメントの返事を書き始めた。


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