第67話目 交流49 MASATO

 昨夜はAIにおやすみを言ったあとも、身体の疲れはあるものの、AIとの言葉のやり取りを目で追いつつ暖かい気持ちに包まれ、疲れは心地いいものに変化し、ベットに入ったあともAIを想い、見たことのないその顔を幻の中に見つけようと、目を閉じているうちにいつの間にか朝を迎えた。


 6時半か。目覚ましをかけてない休日も、やはりこのくらいには一度目が覚めてしまう。直人はスマホの目覚ましを8時半に設定し、もう一度目を閉じた。


『……NAOさん、NAOさん…………真崎先生……』


 遠くで誰かに呼ばれた気がして、ハッと目が覚めた。自分を呼んだその声の主を靄の中から探し出すように、直人は再び目を閉じてみた。


 あれは……あの子だ。どうして今、あの子なんだ?靄の中にいた寺井という生徒を見つけた時、AIを想い、AIが髪を切った話を聞き、いつの間にか始業式の日に目にした髪を切った寺井という生徒が頭に浮かび、それが脳の引き出しから飛び出て夢に出たらしい。そんな分析をし、生徒が夢に出てきたことを自分に納得させた。


 こんな夢を見、それを覚えているのは眠りが浅かったのだろう。直人はベットから起き上がろうと思ったが、もう少しこのまままどろんでいることにした。休日の朝のこの気怠い気分を感じることも気持ちがいい。


 そう思い目を閉じると、また眠りに落ちそうになった瞬間、かけた目覚ましが鳴った。


「さて、起きるとするか」


 直人は起き上がり、シャワーを浴びようとし、まず先にパソコンを立ち上げた。今日は帰りが遅くなることをAIには話してある。だからきっと、AIは直人を……MASATOを待つことはないだろう。それはわかっていたけれど、もし、AIが夜にでもブログを開けた時、MASATOからの書き込みがあったなら、きっと……喜んでくれる…だろう。そんな期待も込めつつ、シャワーを浴びるために浴室へ向かった。


 身支度をし、朝昼兼用の買っておいたバターの入ったロールパンを2つとヨーグルト、バナナの食事を済ませ、ブログを開いた。


 『AIさん、おはようございます。……と、もうおはようの時間じゃないか(笑)今から出かける支度をして行ってきます。今日はここに来られないかもしれないから、今、会いに来ました。今日の会合でGWのクリニクラウンの予定もわかると思うので、また明日にでも書き込みに来ますね。では、いってきます』


 AIのゲストページにそう書き込んだ。これで明日もここに書き込みをしても不自然ではない。何かしらの口実があったほうが、書きやすい。ただ会いたいなんて、ここで会いたいなんて、なかなか言えるもんじゃない。……たった今、そう書いてしまったけれど。


 AIさん、どんな人なんだろう?身長は、髪型は、顔は……目は、鼻は、口は……どんな表情をするんだろう?笑顔は、怒った顔は、…悲しい顔も、どんな表情だって見てみたい。人を顔で好きになるとか、そこが重要なポイントではないけれど、表情には心が現れることがある。顔つきというものも、生きてきた何かがそこに映し出される瞬間がある。それすら今は知りたい。


 でも、それは言えない。今は言えない。いつか、言える日が来るんだろうか?クラウンフェスタの時、会いに来てくれるだろうか?AIさん、どんな人なんだろう。


 

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