第65話目 交流47 MASATO
AIさん、金蔵のラーメン食べてくれたんだな。何時頃に行ったんだろう?聞いてみようか。いや、でも、今日自分も行ったんだって言ったら、まるで探しに、会いに行ったと思われて、やっぱ警戒されちゃうよな……でも、AIさんもクラウンフェスタに来たいようなこと言っているし、バルーンアートが欲しいとも言ってくれているし……聞いてみようか?
『AIさん、今日は金蔵には何時頃に行ったんですか?……実は自分も……
そこまで書いて、手が止まった。いや、やはりAIの反応が怖い。……
『AIさん、今日は金蔵に何時頃に行ったんですか?津田市のほうですよね?実は自分も、今日の昼は金蔵だったんです。バカみたいな話だけど、3日連続ラーメン(笑)でもね、自分は今日、職場にも近い本店の方に行ったんです。津田市の方まで行けば、AIさんに会えたのかな?なぁんて(笑)今日は自分も金蔵のつけ麺でした。同じですね(笑)』
胸の鼓動が、一つ二つ揺れた。……一つ、嘘をついてしまった。
自分の口から出る言葉には責任が伴う。だから相手に誠実であれと思ってきたのに、こうした顔の見えない場所でも、誰に対してもそうであれと思ってきたのに、今、一番嘘などつきたくない相手に、一つ嘘をついてしまった。
だって、仕方ないじゃないか……AIさんに、警戒されたくない、嫌な人だと思われたくない、ストーカーみたいだなんて、思われたくない。AIさんの反応が怖い。いい人でいたい。AIさんの前では、誠実な自分でいたい。そう思われたい。
『えっ?MASATOさんも金蔵のつけ麺だったんですか?わぁ、なんだか嬉しいです。同じもの食べたなんて、なんか……嬉しいです。でも残念、私は津田市の方に行きました。同じ金蔵でも店違いでしたね。私は今日は12時半過ぎに行ったんですよ。すごく混んでいるんですね。ちょっとだけ待ちましたよ。でもとっても美味しくて、混むのがわかる気がします。MASATOさん、昨夜は随分と遅くなってしまいましたけど、今日は大丈夫でした?午前は部活に出たんでしょ?早起きだったんじゃないですか?あっ、そういえば美容院に行こうかなって言ってましたけど……行かれました?』
12時半過ぎか……それじゃあ会えないか。AIさんが帰ったあと、店に行った自分は、そこにAIさんの姿を見つけられるはずがなかったのだ。
AIさん、どこに座ったんだろう?自分が座った辺りにいたのだろうか?それとも……
直人は自分が座った場所を思い出しながら、そこから見える店内にAIの姿を想い描きながら、髪を切ったばかりのAIの姿を想い描きながら、どういうわけか髪の短くなった寺井さんの顔とそれが重なって、それを振りほどくのに少しだけ苦心し、苦笑した。
『はい。お昼を食べて一旦帰ってきてシャワーを浴びて、それから行ってきました。さっぱりしましたよ(笑)まあ、ちょっと短くしただけですけどね。と、考えてみたら、今日は自分とAIさん、似たようなことしてましたね(笑)そうですね、昨夜はちょっと夜ふかししすぎたかもしれません。AIさんにおやすみを言ったあとにもダラダラ飲んでしまいました(笑)』
『ビールですか?(笑)あっ、でも寝る前にちょっと飲んだくらいのほうがよく眠れるってことないですか?明日はクリニクラウンの会合だって言ってましたね。今夜はあまり遅くならないほうがいいんじゃないですか?会合中に居眠りなんてしたら大変(笑)早めに休んでくださいね』
AIさん、昨夜遅かったから疲れているのかな。そりゃそうかな、美容院に行ったあとにラーメン食べに行ったんだから、美容院は朝一だったんだろう。もう、眠いのかもしれないな……でも、
『そうですね、今夜は早めに寝るようにするつもりです。あっ、でも会合は午後からなので、朝はゆっくりなんですよ。だから……もう少しだけ、もう少しだけ一緒にいてもらってもいいですか?』
『もちろんですよ。なんだか……そう言ってもらえて嬉しいです。今日は私、MASATOさんのこと考えている時間が多かったんですよ。ラーメン食べているときとか(笑)髪を切っているときも、MASATOさんが話していた生徒さんのことまで考えちゃったし(笑)そういえば聞いてみたかったんですけど、クリニクラウンのボランティア始めるきっかけって、ワークショップに参加したことだって言ってましたけど、そもそもそのワークショップに参加したきっかけって、なんだったんですか?……って、聞いてもいいですか?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます