第62話目 交流44 MASATO

 クラウンフェスタのこと、言っちゃった。よかったかな、なんか仲間になってくれたらなんて書いて、軽くかわされたすぐ後に見に来て欲しいなんて、これじゃまるで誘ってると思われてもしかたないよな……


 直人は今夜のやり取りを思い返しながら、そう思いながらも、AIの反応はそう悪いものではなく、むしろ興味を持ってくれたに違いない。だって楽しみにしていると書いているではないか。けれど交流は慎重にしよう。しつこいとか嫌な奴だとか思われたくない。


 AIは明日も自分を待ってくれる。その言葉はそんな不安も払拭してくれるには十分な言葉でもあった。


 翌日、午前の部活終わりに自分でもバカみたいだと思いつつも、一昨日行ったばかりの金蔵に寄った。まさかな、まさかなと思いつつ、カウンター席に座りながら周りを窺うも、それらしき女性の姿はない。そりゃそうか。ちょうど同じ時間にラーメン屋にいるなんて、約束でもしない限り無理に決まってる。もしAIさんがここにきたとしても、きっともう食べ終えて帰ってしまっただろう。


 午後1時半を過ぎたこの時間、休日の昼にはいつも満席のこの店も、空席が目立ち始めていた。


 今日は昼食後にいったん帰って、シャワーを浴びてから美容院に行くとするか。


 直人は一昨日と同じつけ麺をAIに言ったとおりの食べ方で食べつつ、今日はAIと何を話そうか、どんな話題にしようか、そうだクラウンの記事を書かなければ、AIに昨夜そう言ったからなと、今日書く記事と共にUPするバルーンアートの写真をスマホの中に探していた。


 部屋に戻りシャワーを浴びると、ついパソコンをつけてしまった。もしかしたら今日休日のAIが何か書き込みをしているかもしれない、何か記事を書いたかもしれないと気になったからだ。スマホではやはり画面が小さくて見ずらい。


 が、AIのブログにもMASATOのブログにも何も変化はない。いや、変化はあった。さつきさんとニコさんがラーメンの記事にコメントを書いていてくれた。そういえば昨日のネコさんのコメントにも返事をまだ入れていなかったな。夜、AIと少しでも長くやり取りをしたい。そんな気持ちもあって、まずこの3人にコメントの返事を入れてしまおう。……と、AIさんからのコメントにも返事を忘れてはいけないな、返事は4人だ。


 『AIさん、はい、ラーメン大好きです(笑)これ、〇△ラーメンですよ、おわかりいただけて嬉しいです(笑)これ、美味しいですよね』


 『内緒さん、いらっしゃいませ。あ、バレていましたか(笑)これ、美味しいんですよ。よかったらまたわたしのブログにも遊びに来てくださいね』


 『さつきさん、やっぱ知ってましたか(笑)娘さんも好きなんですね。美味しいですもんね。実は今日のお昼もラーメンでね……


 と、ここまで書いて、ふと、これはマズイかもしれないと思った。


 今日の昼ラーメン、しかも金蔵かもしれないとわかるようなコメントを書いたら、まるで本当にAIさんと会いたくて行ったと思われないか。いや、それはそんな気持ちも全くなかったとは言わないが、それでもこれじゃあストーカーみたいに思われても困るな。


 『さつきさん、やっぱ知ってましたか(笑)娘さんも好きなんですね。美味しいですもんね。さつきさん自身はどんなラーメンがお好きですか?』


 『ニコさん、ニコさんもラーメンは塩味が一番ですか!自分、基本味噌味が好きだと思ってましたが、考えてみたらお店で食べるのは醤油ベースや豚骨ベースとか、そういうのが多かったです。味噌が好きというより、この店が好き、あの店が好き、このラーメンはこの味といった風に、食べるラーメンによって味はまちまちでした(笑)』


 これでいい。


 なんだかんだで16時近くになってしまった。さっさと美容室に行って、適当に夕食を買い帰ってこよう。記事を書かなければ。AIさんに読んでもらうために、自分がクリニクラウンのボランティアでやるために習った、いくつかのバルーンアートを見てもらいたい。


 直人は逸る気持ちを抑え、パソコンを閉じた。


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