第47話目 交流29
マドレーヌ(F)
今夜は、夕食後のデザートにマドレーヌを焼きました。
もちろん、砂糖控えめ甘さ控えめです(笑)
自分で作ると、それができるからいいですよね。
もちろん、買ってきたものはめちゃめちゃ美味しいんだけど、
ただでさえお菓子作りが好きなので、体重増加は恐怖なのです(笑)
今、コーヒーと共に美味しくいただいたところです。
その書き込みと共に、撮っておいた、縁に青い小花柄の白いケーキ皿に乗せたマドレーヌの写真を添付して記事を更新した。そのマドレーヌは、お皿の上に一つ置かれたマドレーヌに斜めに乗せる形でもう一つのマドレーヌが写ったものだった。
本当は、夕食後にマドレーヌなんて食べてなかった。
でも、でも……嘘じゃない。夕食後にマドレーヌを食べたのが今日じゃなかったってだけで……だから嘘じゃない。そう自分に納得させた。そう書いたとき、MASATOが書いてくれた、AIに誠実さを感じるというその言葉が、不意に胸に襲ってきたのだった。
小さな罪悪感めいたものを感じつつ、まだMASATOは山にいるだろうと思いつつも、F5キーを押してみた。
すると、すぐに一つのコメントが入っていた。SUNさんだ。
『AIさん、また美味しそうなもの作ってますね。甘いものあまり食べないのですが、AIさんがUPするお菓子が美味しそうで、最近はコンビニでスイーツに目が行くようになりました(笑)』
『SUNさん、ありがとうございます。疲れたときは甘いものが癒してくれることもありますよ。たまーには、たまーにはいいかもしれませんよ(笑)』
返事を書いてから、当分MASATOは来ないだろうと、明日の学校に行く準備をもう一度確認した。とはいっても、始業式があるだけなので、上靴と掃除用の雑巾と文房具と、持ち物はそのくらいのものだ。壁に取り付けられたポールには、クリーニングされた紺のブレザーとスカート、えんじ色リボンが掛けられていた。
それを着た自分の姿を想像しながら、明日どこかで真崎先生を見られるかな、始業式があるんだから、きっと体育館で見られるはずだ。でも自分たちが整列した後、後ろの方にきたら目にできないかもしれないな……あれこれ妄想しながら、明日、学校にカメラを持ち込むのは無理だろう。けれど職員室と事務室の間に貼られている写真だけはチェックしに行こう。そこにきっと、真崎先生が写っているはずだ。そんな自分の行動を思い浮かべていた。
そうして妄想したり、読みかけの本を手に取ったりしながらも、5分おきほどで何度もF5キーを押して、画面に変化がないか確認していた。そんな具合だから、本の内容に集中できるはずもなく、読み始めた場所にしおりを挟むと、後ろのベットに寄りかかり、目を閉じた。
「んっ……いたっ」字を追いかけていたからか、目の疲れを感じ、休めるために目を閉じた。その一瞬で寝落ちしたようだ。首に微かに痛みを感じ、ハッとして時計を見ると、22:30を過ぎていた。一瞬だと思っていたが、実際は30分以上ウトウトしていたようだ。
急いでF5キーを押してみると、新しいコメントが入っていた。MASATOかと思い目を留めると、りょうさんだった。MASATO……まだ帰らないのかな?それとも、明日から学校が始まるから今夜はもう寝ちゃったのかな……
時計を見ながら、りょうへの返事を入れようか悩んだ。ずっとパソコンの前にいるみたいで、ヒマな人だと思われないだろうか?でも、もしかしたらMASATOからコメントが入った時、すぐに返事を入れたいし……
いろんな感情が頭の中でせめぎ合い、MASATOが来なくても、それはそれで仕方がないかと、りょうへコメントの返事を入れた。
すると、ほぼ同時でMASATOからコメントが入った。それも、内緒でだ。
『AIさん、マドレーヌ美味しそうですね。甘さ控えめにできるって、いいですね。糖分とりすぎなくていいですよね(笑)自分の記事にもコメントありがとうございました。慣れた山ですから夜でも大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます。帰りにね、夕飯用にラーメン食べてきちゃって、それで遅くなりました』
MASATO、ラーメン食べてきたんだ。それで遅かったんだな。
でも、帰ってきてすぐに来てくれたんだなと思うと、嬉しい。すごく嬉しい。MASATOはきっと、AIがまだここにいるかなと思い、少しは待ってるかもしれないと思い、すぐに返事を入れなきゃと、急いで返事に取り掛かった。
『内緒さん、おかえりなさい。夜で心配だったから、書き込みしてもらえてよかったです。安心して眠れそうです(笑)ラーメン、美味しかったですか?また、あのラーメン屋さんかな?こんな時間にお腹がいっぱいだと、なかなか眠れなくなりませんか?(笑)』
そんな返事を入れると、5分もしないでMASATOから返事が入った。
愛美は、MASATOもAIがここにいることを知り、すぐに返事を入れてくれたんだろうと思い、それが嬉しくて高揚する胸の高まりを感じて、目を熱くした。
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