第39話目 交流21

 『AIさんの母校では校則が厳しかったんですね。実は自分の勤める高校でもかなり校則が厳しいんですよ。若手の先生の中には、ここまで厳しくしないでもと口にする人もいるくらいで、時代にそぐわない!なんて言いながらね、学校では厳しく違反している生徒はいないか目を光らせているんですよ(笑)以前はね、反発する生徒たちが当時、髪形のこととか携帯持ち込み許可を求め署名集めたこともあったらしいんだけど、校長の鶴の一声であっさり却下。あなたたちは伝統あるわが校を選んで入学したはずです。そこには校則も書かれていたはずです。納得して入ってきたと理解しています。嫌ならば転校をお勧めしますって。まあ確かにね、校則は最初からこまかーく書かれたてたから(笑)AIさん、熱くなれないのですか?でも確かに夢中になれることを見つけるのも簡単ではないのかもしれませんね。自分は何でも興味持つと手を出しちゃうんで、熱いと言われればそうかもしれませんが、逆に飽きっぽいところもあるんですよ(笑)バトンありがとうございました。AIさんのことが少しでも知ることができてよかったです』


 署名集め?そんなことしてた先輩たちもいたんだ。


 MASATOのコメントで、思いがけずそんなことを知ることができ、ちょっとだけ得した気分だった。しかも校則が厳し過ぎると思ってる先生たちもいて、それでも厳しく指導していることも知り、大人は大人なりに感情とは別の部分で戦ってるのかもしれない。愛美はより校則をちゃんと守らないといけないなと、なんとなくそう思った。自分でも不思議な感情だった。


 『内緒さん、コメントありがとうございます。職場ではそんな感じなんですね。大変なんですね(笑)でもまだ同じようなところがあると知り、少しホッとしました。今時そんなとこ希少だって思ってましたから(笑)熱くなれないということで思うのは、例えばよく友人なんかはアイドルのファンになって、コンサートも毎回応募したり、グッズ集めたり、全部の曲を何度も聴いて、しょっちゅうその話とかね、そういうの見ると、そこまで夢中になれるって、すごいなって思うんです。私も好きな歌手だったり曲だったり、俳優さんだったりいますけど、グッズ集めとかしないし、コンサートもわざわざ行かないというか(笑)テレビやパソコンで目にしたり聴いたりして、いいなって思う程度っていうか……常にそんな感じなんです。何に対してもそんな感じの自分がいます。学生時代には、冷めているなんて言われることも何度もありました(笑)だから内緒さんが羨ましく思います』


 『AIさん、自分、飽きっぽいって書きましたけど実際そうで、記事には書いてないハマって飽きたものも多いんですよ(笑)AIさんの熱くなれないっていうのは、自分から見ると慎重だったり冷静だったりに思えて、自分にはないものを持っているように思え、自分のほうこそ羨ましいですよ』


 『内緒さん、ありがとうございます。そんなふうに思ってもらえてすごく嬉しいし、なるほど考え方次第なんだなと思え、直したいと思わないでいいのかなって、なんだか心の余分な力が抜けたようです。そんなふうに言ってくれた人がいなかったから、なんだか……本当に嬉しい。ところで、内緒さんの飽きた趣味って、なんだろう?そこが気になってしまいました(笑)』


 『AIさん、嬉しいって思ってもらえて、なんだか自分のほうが嬉しくなりました(笑)飽きた趣味ですか?そうだなぁ、じゃあまた今度記事にしてみますね。今はね、AIさんに見てもらいたくて、また旅行の記事を書こうかなって思ってるんですよ……なぁんて(笑)』


 『内緒さん、どちらの記事も楽しみにしています。たくさんお話してくれて、とっても嬉しいです。なんだか本当にお話しているみたいで、ちょっとドキドキしてしまいました(笑)』


 『AIさん、本当に……なんだか本当に話をしているみたいですよね。ドキドキなんて言われたら自分もそんなですよ(笑)ドキドキっていうか、ワクワクっていうかね(笑)』


 心臓のドキドキが止まらない。


 愛美はリアルタイムでMASATOとやり取りをして、実際は目の前にいるわけでもないし、言葉を声に出しているわけでもないのに、ちゃんと『会話』しているようで、高揚した気持ちに胸の鼓動が重なり合って、小刻みに震える指先から何か不思議な力が湧き出ているような、そんな感覚に陥っていた。しかもAIに読ませたくて?嬉しくて嬉しい?ドキドキ?ワクワク?MASATOの気持ちが今、愛美に……AIに向いていることを、なんとなくでも感じ取ることができ、愛美は自分の息苦しいほどの心の揺れを感じ取っていた。


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