第36話目 交流18

 夕食を終え、早々に入浴も済ませて部屋へ戻ると、スリープしたままのパソコンを開き、まず自分のホーム画面を開いた。パンナコッタの記事を20時に更新をするように設定してあったため、もしかしたら誰かのコメントがあるかもしれないと思ったからだ。が、さすがにまだ更新されて間もない為、コメントは入っていなかった。


 愛美は夕食前に下書きに入れたMASATOの記事へコメントをコピーし、MASATOのブログへと飛んだ。


 すると、MASATOの『明日へ向かって』の記事に書かれたさつきさんとニコさんのコメントにMASATOからの返事が書かれていた。時間い目をやると、つい今しがたの時間だった。


「MASATO、今、パソコンの前にいる……」


 愛美は急いでコピーしたコメントをMASATOが書いたばかりのコメントの返事の下に貼り付けた。


 すると、ほどなくしてMASATOからのコメントの返事が入った。すぐにそれに気づいたのは、相変わらずそうかもしれないと、愛美がF5キーを何度も押していたためだったのだ。


 『AIさん、こんばんは。今、そちらの記事にもコメントを入れてきたところです。あ、そうそう、反動ね、仰る通り肩にガツンと来て痛かったんですよ。話には聞いていたんですが、あそこまでくるとは正直思っていなくて、しっかりと構えてやらないといけないって実感しました。そんなわけで、何度かやったんですけど的には一度も当たらずです(笑)』


 そちらの記事にも?その一文を見て、自分への返事にいったんサラッと目を通して、自分のパンナコッタの記事を開いた。するとそこにMASATOからのコメントが入っていた。リョウさんからもだ。


 『AIさん、こんばんは。うわっ、美味しそうですね!こんなの自分で作っちゃうんですか?すごいですね。自分、甘いもの系が好きなのでこんなの見たら食べたくなっちゃいます』


 そのMASATOのコメントを読み、愛美はニンマリした。やっぱりお菓子作りの記事を更新したのは正解だ。男の人はこういうの食いつきそうだと思った予想通りだった。


 『パンナコッタって、自分で作れるものなんですね。自分じゃほとんど買うことがないんですが、自分で作れたら買わなくていいですね(笑)』


 リョウさんは甘いものあまり食べないみたいだな。


 愛美はその2つのコメントにまず返事を入れた。


 『MASATOさん、甘いものお好きなんですね。私はお菓子作りが好きで、中学生のころから簡単なものは作っていました。あと、マドレーヌとかベイクドチーズケーキとか、プリンとか……作りますよ』


 あえてクレープは書かなかった。何故かと聞かれると困るのだが、何でも書いてしまわない方が、記事にしたときの感動が大きくなるような気がしたからだ。


 『リョウさん、自分で作れるとコストダウンになっていいですよ(笑)あと、自分の口や身体に合わせて、甘すぎずに作れていいんです』


 リョウさんにコメントを入れ、画面が更新されると、ほぼ同時にリョウさんへのコメントの返事の下に、新たにコメントが書き入れられていた。


 『ベイクドチーズケーキ、大好きです!自分、チーズが好きで、ケーキはついチーズ系を買ってしまいます。うわ~いいな~AIさん、自分で作れちゃうんだ』


 ドキッとした。MASATOだ。


 こんなにすぐに書き込んでくれるなんて、やっぱり今、MASATOは画面の向こうにいる。そのことが嬉しくて、ここにいないのに会っているような、そんな気がして身体がカッと熱くなった。


 『MASATOさん、チーズケーキ好きなんですね。ベイクドチーズケーキの他にも、レアチーズケーキも作れますよ。私もベイクドのほうが好きなので、ベイクドを作るほうが多くなるんですけどね』


 『えっ、レアチーズケーキもできるんですか!?すごいすごい、尊敬ですよ。今までそんな人に会ったことないので、驚きと感動ですよ』


 すぐにMASATOからのコメントが入り、愛美の身体は熱いまま浮き足だっていた。が、『今までそんな人に会ったことがない』この一文には勘が働いた。きっと、MASATOが今まで付き合った人の中にはお菓子作りが趣味の人はいなかった……ということだろう。


 『MASATOさん、そんなに感動していただけて嬉しいです(笑)お近くでしたら作って差し上げられたのに、残念(笑)今度作った時にはUPしますね』


 『お近くでしたら』この文言には、近くにいるかどうかわからないという意図が込められていた。あくまでも、お互いがどこにいる人なのかわからないということを印象付けるためだ。


 そのコメントのあと、MASATOからの書き込みはされなかった。幾度となくF5キーを押したが返事がなく、自分の入れた返事がMASATOの気分を害したんじゃないかと、愛美は不安に襲われていた。


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