第31話目 交流13


 『AIさん、ここすごいでしょ?自分もここに立った時、もう感動という言葉が軽く思えてしまうほどの感情の揺さぶりがあり、自分ってちっぽけだなと感じたし、もっともっと知らないこと、知らない場所をたくさん知りたいと思ったんです。もしかしたら今の生き方にも少しだけ影響しているかもしれません。まあ、つまり、やってみたいと思ったことに手を出し過ぎてるというか(笑)』


 もしかしたらと再びMASATOのブログへ飛ぶと、先程入れたばかりのコメントに返事が書かれていた。いい反応だと思うと同時に、今、この瞬間、MASATOもパソコンに向かい、ブログを開いていると思うと、なんとなく繋がっている感が心にやってきて、嬉しさで思い切り顔が綻んだ。


 愛美は今日作ったクレープの記事の作成をしておこうと自分のブログに戻ると、先程返事を入れた『その道化師の名は』に新たにコメントが書かれていることに気付いた。誰だろうと記事をクリックすると、そこにはMASATOから再びの書き込みがされていた。しかも内緒の鍵付きでだ。


 『AIさん、本当の道化師さんって言葉にドキリとしました。自分の記事、遡って読んでいただけてたんですね、嬉しいです。ありがとうございます。それに関してですけど、またボランティアでクリニクラウンとして参加することが決まっています。入院で学校に行けなくて暗くなりがちな子供たちに、少しでも笑顔を届けたいと思っているんです。また記事にもしますね』


 これは、『本当の道化師さん』を自分のことだと受け止めたということだろう。この反応は愛美にとってもいいものであった。記事を全部読んだことも伝わったし、それをMASATOが嬉しいと思ってくれていることは間違いなさそうだ。そしてこのコメントのやり取りから、私が今、パソコンの前にいることにもMASATOは気づいているだろう。ならばと、これにすぐに返事を入れることにした。


 『内緒さん、はい、全部読みました。素晴らしい試みをしていて、内緒さんっていい人なんだな、素敵な人だなって思いました。その記事、楽しみにしていますね』


 返事を書き込んだあと、クレープ記事の作成をした。



     クレープ


   今日はクレープを焼きました。


   お菓子作りで初めてクレープ生地を焼いたとき、


   破れたらいけないと思い、何度も厚くなり過ぎたりして


   薄く焼くのって、難しいなと思いましたが、


   最近はようやくいい感じで焼けるようになりました。


   その生地でバナナと生クリーム、チョコレートをを包んで、


   さらに生クリームやチョコで、こんな感じにデコってみました。


   時々行くクレープの美味しいお店みたいにしようと思ったけれど、


   やっぱりあんなにお洒落にすることは難しいです(笑)


   やっぱプロって、すごいなぁ(笑)


   でも、とっても美味しかったです。



 その記事と共に、クレープの写真も添付し、下書きとした。


 それからしばらくMASATOから何か書き込みがあるかと待ってみたが、AIのブログへの変化はそれ以降なく、でも、もしかしたらという気持ちが消えるわけでもなく、愛美はパソコンをつけたまま、今日借りてきた『提灯祭りの夜』を読み始め、時折F5キーを押し画面の更新をし、そんなことを何度か続けながら23時になり、画面の変化がないことを再度確認してパソコンを閉じた。

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