8

この小さな部屋以外に、逃れる場所なんてない。



それに、逃れたところでどうなるというのか。



僕は、たった一人だ。



家族を作り、増やしていく望みも絶たれた。



この先ずっと一人で生きていくしかない。




立ち上がったら、よろめいた。



岩壁に手をついて、身体を支えながら外へ向かう。




――どうせ死ぬのなら、最後に一度だけ、叶うはずのなかった夢を叶えたい。




今は、夜。



太陽はないけれど、光に弱い僕の目は、月さえ直視できない。



だけど――。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る