第17話 風呂に入ろう
4月14日(金) 午後5時半
なんという事でしょう。
今俺はクラスメイトの女子二人に体を洗われている。
男の頃ならば鼻血でも吹き出す場面なんだろうが、今俺は女。
性的興奮など一ミリも無い……と言ったら嘘になるか……。
「梢……柔らかい……」
ちょっ! ドサクサに紛れて揉むな!
く、くすぐったぃ!
「ほら、暴れないの。ちゃんと脚あげなさい」
光が後ろに、花京院 雫が前に。
二人で椅子に座る俺を前後からスポンジで責め立てている。
「勘違いされるような表現やめてくれるかしら。私の恋愛対象はあくまで男の子よ」
そ、そうですね……俺は恋愛対象では無いか……。
「あら、それは勘違いしてもいいわよ? 梢が良ければ私は貴方の物になってもいいわ」
ちょ! やめて! そういうの!
俺の純情を弄ばないで!
「あら、ワリと真面目よ。 今日男子を叱りつけた時なんか正直危なかったわ。貴方が男のままだったら……確実に惚れてたわね」
い、いや……どうしたんだ、花京院 雫! お前はそんなキャラ設定じゃ無かった筈だ!
もっとお嬢様らしく、世間知らずな一面を見せつつ……
「あら。大丈夫よ、作者は三歩歩いたら忘れる頭だもの。そんなのどうとでもなるわ」
くっ……どうでもいいが、なんか作者ディスるネタ多くないか?!
だいぶパターン化してきたぞ!
【注意:す、すんません……】
そのまま体中をくまなく洗われる俺。
生徒会の人達に洗われた時は……まあ、なんか洗車機の中にぶち込まれた勢いだったが、今は素直に気持ちい……眠ってしまいそうだ!
「喜んでもらえてなによりよ、じゃあ次……私洗って貰おうかしら」
拙者、用事を思いだしたでござる。
「待ちなさい、自分だけ洗われて逃げようなんて……失礼な話じゃない?」
いや、あの、だって!
「いいから、脚のつま先から隅々に至るまで綺麗にするのよ!」
くっ、ならばよかろう……俺の体を洗うテクを見せてくれる……覚悟しろ!
「受けて立つわ、じゃあ脚から舐めて貰えるかしら」
拙者、お腹が痛くなってきたでござる。
「流石に冗談よ。ほら、早く洗ってちょうだい、光はラストの大トリよ。梢も実は期待してるんでしょ?」
き、期待って……確かに光は肌綺麗だし、無駄が無いし……
チラ……っと光を見る。思わずそのまま見入ってしまうほど光の身体は綺麗だ。
綺麗という単語しか思い浮かばない。
「あら、作者をディスらないのね。ボキャブラリー少なすぎるっ……とかって」
いや! 今のは本当にそう思ったんだ! あんまり虐めるな!
うぅ、女の子の体を洗うのなんて初めてだな……上半身は光の担当か。
じゃあ俺は下半身か……
「どうしたの? 梢。女の子同士だからって……そんなに恥ずかしい所見つめられると……流石の私も……」
いや! 違う! そ、そんなつもりじゃ……
「冗談よ、ほら、馬海君だってお風呂入りたいだろうし……手際よくお願い」
うぅ、はい……花京院 雫は今、椅子の上に座っている。
いきなり脚の先から洗うのもな……一番最後にすべきだ。
ということは……下半身で一番最初に洗うべき場所……それは……太ももか。
スポンジにボディソープを垂らし泡立てる。
よし、やってやる……俺だって女だ!
えーっと……太ももを撫でるように……
「あははっ、くすぐったいわ、梢……もっと力いれても平気よ」
そ、そうか、じゃあ……もっと……
ぐしぐし……
「んっ……あ、貴方……上手いわね……そ、そう、その動きよ……!」
ん? こうか……?
小刻みに、まるで歯磨きのチョコチョコ磨きのように太ももを洗う。
「チョコチョコ磨き? 何それ。シャカシャカ磨きでしょ?」
「え? ゴリゴリ磨きだよね?」
なんか三人とも歯磨きの効果音が違うな……っていうかゴリゴリって……光さん、貴方一体何で磨いてるの……。
「歯ブラシ……」
ですよね!
いや、しかしゴリゴリなんて音は……
「梢、太ももはもういいわ。先に進んで頂戴」
ぁ、はい……お嬢様
次は膝から……ふくらはぎ……膝の裏……足首……それを両足。
なんか……ハマるな。他人の体洗うの結構楽しいかも……。
花京院 雫の肌ってただでさえスベスベだし……
「ふふ、梢……だんだん手つきが上手くなってきたわね。光の身体はもっと凄いわよ」
「ちょっ、雫……何言って……」
むむ、女子二人でキャッキャしてる……お、俺も混ぜろ!
「何言ってるの、当たり前じゃないっ」
と、そのまま俺の手を引いて……抱き寄せて来る花京院 雫……ってー!
な、なにして……うおい! やばい! これは……18禁になってしまう!
「大丈夫よ。このくらい少年漫画でも日常茶飯事よ。ほら、光も……」
そのまま三人とも、お互いに手を伸ばして……三人で抱き合う。
何してんだ……これ……
「あははっ、本当ね、何してるのか分からないわ……」
って、うお! 花京院 雫……力結構強いな……なんか引き寄せられる……
「……本当に……楽しいわ……私……」
ん? どうしたんだ、一体……ってー! どうしたんだ?! 泣いてるのか!?
「はぁ……いいわね、女子高生って……こうやってお風呂に入るだけでも……こんなに楽しいんだもの……」
ふ、ふむ……どうしたんだ、花京院 雫……いつもより感傷的になってないか?
「そうね……じゃあ私……光にライバル宣言するわ」
……はい?
な、なんのライバル?
「光、私……これからガツガツ行くわ。負けないからね」
何言ってんだ、コイツ……ガツガツって……腹減ったのか?
あぁ、寿司沢山あったもんな。より多く食べたほうの勝ちってルールだな!?
「梢の天然ぶりは……なんだか安心するわね。ほら、光……あんたも宣言しなさい」
ふむ。二人ともそんなに寿司好きだったんだな。俺も好きだけど。
「うん……私も……負けないから……」
そのままシャワーを出しながら、三人でお湯を浴びる。
なんだ、この儀式は……ま、まあ気持ちいけど……。
「あ、梢……まだお尻と脚の先洗って貰ってないわ、お願い」
あぁ、そうだったな……って―! 脚の先はまだしもお尻って……
じ、自分で洗ってください!
「あら。自分は洗って貰っておいて……私のは洗えないって言うの? おかしな話だわ」
そ、そうかもしれんけど……う……お尻さり気無く向けないで……っ!
男だったら確実に鼻血吹きだしてる!
うぅ、わかった! わかったから……っ
そっと花京院 雫のお尻を……スポンジで擦る。
うわ、分かってたけど……柔らかぃ……
今なら電車の中で痴漢する男の気持ちが分かる気がする……
「そんなの理解する必要ないわ。私のお尻で良かったら好きなだけ揉ませてあげるし」
うぅ、はい……ありがとうございます……
よ、よし、洗ったぞ! 次に脚の先……ん? なんだコレ。爪に模様が付いてる。
なんか親指にだけ一枚、桜の花びらみたいのが……。
「どうしたの? 人の足の指ジロジロ見て……って、あぁ、ペディキュアよ。梢もやってみたい?」
ふむ……確かに可愛いかも……しかしコイツ……爪も綺麗だな……。
「あとでやってあげるわ。道具も持ってきてるし……」
「ぁっ、雫……私もやりたい……」
花京院 雫の髪を洗う光。興味深々なご様子だ!
「いいわよ。じゃあ三人でお揃いにしましょうか……今日の思い出に」
ふむぅ、なんか女子高生っぽい。
なんかいいな、こういうのも……。
そのまま足の先を隈なく洗い、シャワーを出して濯ぐ。
花京院 雫も満足なご様子だ! ふぅ、やりとげたぜ……。
「じゃあ次は光ね。ほら、次は梢が上半身よ、光は髪と体どっちから洗う派?」
ふむ、俺は頭から。花京院 雫は体から。そして光は……
「え、んー……同時?」
あの……光さん、貴方……手何本あるのかしら。
「いやっ、先に腕洗って……それから髪洗って……体洗って……って感じに……」
成程……そう言う事か。光が千手観音になるのを想像してしまった。
「そ、そんな……ネイルとか大変そう……」
そっち?! と、先に光の腕を洗って差し上げる。
むむ、コイツ……花京院 雫よりも肌スベスベ……まさに透き通ってるな……
細いし……かと言って骨が浮き出てるわけでもないし……柔らかいし……
よし、腕は洗ったぞ。次は髪か……光の髪長いな。
まだ俺の髪が長かった頃、美奈に洗われたように指で梳かしながら洗う。
髪の毛も凄いな。全然絡まない……もっと引っかかると思ったのに……。
「梢、髪自体も大切だけど、頭皮も洗ってあげなさい」
あ、はぃ。頭皮を指の腹で擦る。
むむ、なんかエステシャンになった気分……ゆっくりマッサージするように揉みこむ。
「ふぁっ……梢上手い……」
ふふふ、子供の頃は母親によく褒められたものだ! 梢は肩もみが上手ねって!
「あら、それなら私も言われわよ。父に雫は踏むのが上手ねって」
……踏む……って、え? 顔を?
「私の父を勝手にドMにしないでちょうだい。背中よ。子供の頃は良く踏んでマッサージしてたわ」
あぁ、それでこんな性格になったのか……男を足場にして育ったから……
「梢……あとで覚えときなさい……今夜は寝かさないからね」
な、なんすか……その脅し……
光はクスクス笑ってるし……
ええい! さあ、髪を洗い流すぞ! こむすめ!
「ぁ、うん。よろしく……」
シャワーからお湯を出し、ゆっくり流す。
髪の毛のヌルヌルが完全に無くなるまで……
頭皮も再び揉みこみながら水を流す。
ふむ、完了だ!
「まだよ。はい、コンディショナー」
と、花京院 雫に手渡される。ん? なんこれ。
「簡単に言えば保湿よ。貴方にもさっき光が付けてくれたじゃない」
え?! あれって、二回シャンプーしてたんじゃ無かったの?!
「貴方……面白いわね……まあ良い機会だから覚えるといいわ、まずは少しだけ手に出しなさい」
ふむ……少し……ってどんくらい?
「ワンプッシュでいいわ」
ワンプッシュ……出しました! 先生!
「それを手に馴染ませて、髪の先から両手で挟むようにしながら……」
ふむ、言われた通りに……こうかしら……
「そうそう。そのまま髪全体にやってあげて。頭皮には出来る限り着けけないようにね」
ぁ、はい……ふむぅ、これで髪サラサラになるのか。男には必要ないな。
「そんな事ないわ。むしろ男こそコンディショナーやリンスをちゃんと使うべきよ」
えっ……そ、そうなんすか? 俺が男の頃は……トニックシャンプーでガーっとやってただけだし……。
「髪がボサボサだと清潔感無いもの。クラスの男子だって髪短いからって大雑把すぎね。あぁ、日下部君は結構綺麗だったけど」
あぁ、日下部君は……ちゃんと手入れとかしてそう。
俺……負けてるかも……。
「これから挽回すればいいわ」
うむ……と、そのままコンディショナーを洗い流す。
むむっ、さっきより格段にサラサラになってる気がする!
「気のせいじゃないわ。それがコンディショナーの威力よ! 覚えておきなさい! リンス・コンディショナーを制する者は世界を制するのよ!」
ぁ、それ……なんか聞いた事ある……
【注意:某アイドルグループのリーダーが言ってました(リアルで)】
さてさて、髪を洗い終えたし……次は体……って
ゴクっと唾を飲みこむ。
光の身体に……触っていいのか?
いや、既に腕洗ったけど……な、なんか……綺麗ずぎて……
「何言ってんのよ。ほら、堂々と触りなさい」
ってー! 花京院 雫! 胸を触らせんな! うわっ……ひ、光の……花京院 雫のに比べて大きいし柔らかい……
ちょっ、しまった! 思わず揉んで……
「……どうしたの?」
何事も無かったかのように佇む光さん。
いや、どうしたのって……その……揉んでますけど……
「いやいや、いいよ、たんとお揉み?」
……やばぃ……凄い恥ずかしい……俺意識しすぎ……?
そうだ、俺は女なんだ……一々動揺してどうすんだ。
で、でも……光の……すごい気持ちい……
「ぁ、ぁの……梢? そ、そろそろ……」
ハッ……! 光が引いてる!
い、いかん! これではスケベ親父と一緒ではないか!
しかし花京院 雫はここぞとばかりに
「何言ってるの。女子はある意味……皆スケベよ!」
何言ってるの?
三人とも体を洗い終え、浴槽に一緒に浸かる。
ふふ、自慢じゃないが我が家の風呂は三人くらいなら余裕で入れるのだ!
「あら、家のお風呂は五十人は行けるけど?」
スケール違いすぎるッス。
二人は俺を挟みこむように入浴している。ふふぅ、両手に花とは正に……
と、当たり前の様に手を繋いでくる二人。
「どう、梢。女の子楽しんでる?」
まあ……楽しんでるな、確実に。
友達とお風呂に入るなんて……男の頃は考えられんかったし。
「そうなの? 入ればいいのに。男の子同士でも」
いや……俺は御免被る……。
あーっ……なんかもう……かなり時間が経ってる気がする。
こんなにゆっくり風呂に入るのは初めてだな……
いつもはカラスの行水だったしな……。
「あははっ」
いきなり笑いだした俺を見つめる両サイドの二人。
「私、今凄い楽しい……ありがと、二人共……」
あ、俺……また私って言った……
まあいいか。そろそろ俺っていう一人称も卒業すべき……
ってー! どうしたんだ! 二人共! 顔真っ赤だぞ!?
「や、やばいわね……ホントに今危なかったわ……鼻血でそう……」
のぼせたのか?! 花京院 雫!
「こ、梢……卑怯だよ……」
何がだ?! 光!
そのまま二人して俺に寄りかかってくる。
光は、そのまま俺の手を握りしめながら呟いた。
「ずっと……一緒に居てね……ずっと友達だよ」
ぁ、やばい……
俺、なんか……女になって涙もろくなってないか……
グズグズと鼻を泣いてしまう。
そんな俺の頭を二人して撫でてくる。
ずっと、この三人で過ごせたら……
きっと幸せだろう
でも別れの時は……いつか来る
その時、また三人で……風呂に入ろう
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