第15話 道中



 店の外に出たツクモたちは、今度こそシキに渡すためのプレゼントを買うために商店街へと向かうことにした。


 先ほどはツクモの前を歩いていたはずのキャロルは、今はツクモの隣を歩いている。


 表情は満面の笑みに包まれており、小さく鼻歌も聞こえてくる。


「ツクモお兄ちゃんは何しにこの街にきたの?」


「うーん……最初に着いた街がここだったから、まぁ何しに来たとかは特にないんだよね」


「……ツクモお兄ちゃんは本当に冒険者なの?」


「冒険者だよ。でも、実は冒険者に成りたてでね。つい二三日前に登録したばかりなんだよね」


 実はまだ依頼を一つも受けていないのだが、それは言わなくてもいいだろう。いや、ランクは上がっているのだから一応納品依頼を受けたと考えてもいいのかもしれない。


 実際、今日は依頼を受けることができるように武器の調達に来たわけだし、冒険者を名乗っても問題ないはずだ。


 まぁ、剣が完成するのはまだ先なわけで、それはつまり冒険者として活動するということも先になってしまうのだが。本来なら適当に売っているものを買う予定だったのだからしょうがないだろう。


 そうして歩いていたら、ハッと気がついたような表情でキャロルが少し距離を取ってからこちらを向いた。そして恐る恐る言う。


「ツクモお兄ちゃんってもしかして貴族様なの……?」


「え? 貴族だと思ったの?」


「うん……。だって、冒険者になりたてなのにお金をいっぱい持ってたり、目的もないのにこの街に来たり……貴族様の遊びみたいなのかなって……」


「あはは。俺は貴族じゃないよ。だからそんなに離れたり怖がらなくてもいいんだよ」


 そういうと、安心したような表情で再び隣に戻ってきた。にこにことしながら時折話しかけてくるが、そのたびに耳がピクピク動いていてとてもかわいい。


「ツクモお兄ちゃんはこの街に来たばっかなんだよね?」


「実は今日着いたばっかなんだ。正直、行きたい場所に着くまでに荷物が串焼きだらけになっちゃうところだったよ」


「なんで串焼き?」


 キャロルがキョトンとしながらツクモに聞く。


「情報を聞くなら屋台のおじさんとかに聞くのが一番だからだよ。だけど、情報はすごく貴重だからただで正確な情報を手に入れるのは難しいんだ。だから、串焼きを一本買うから教えてって言うといいんだよ。ほら、キャロルちゃんのお花を買う代わりに今こうやって手伝ってもらってるみたいにさ」


「そうなんだ! ……ツクモお兄ちゃんは私に手伝ってもらえてラッキーだった?」


「そうだね。こんな可愛い子に案内してもらえるなんてすごくラッキーだよ」


 キャロルはツクモに可愛いと言われて照れたのか、キャー! と言いながら走り出す。その後を追ってツクモも小走りになる。


「おいおい、そんなに走ったら危ないぞー?」


「あははははーーきゃっ! ……いてて……」


「ほら言わんこっちゃない……」


 キャロルは曲がり角を曲がったところで誰かに当たってしまい、尻餅をついてしまった。


「大丈夫? ……って、なんだこの人だかりは?」


 ツクモが曲がったところで見たものは、道を塞ぐように集まる大量の人々だった。

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