一項

カバンから1枚のハガキを取り出し、ポストに入れる。友人が結婚するらしい。高校時代はともに演劇部で切磋琢磨した同級生がいつの間にか芝居を辞め、違う幸せを掴んでいた。あの頃から私に主役の座を渡さなかった彼女は、今度は結婚式で主役だ。ダラダラと芝居を続け、もう彼女にも負けないなんて思っていた自分が惨めで仕方ない。惨敗だ。評価の仕方は色々あれど、私から見た私は完全なる敗者だ。

これを機に実家に戻ろうかと思った。むしろ何故上京してしまったのだろうか。数年前、期待に胸を膨らませながら意気揚々と上京してきた自分が、今やただ生きているだけの人間になってしまった。今さら実家に戻って一から何かをやる気力もない。生きていけてるわけだしこのままでいいような気がしたから、これからもただ生きているだけの人間でいよう。やっぱり何も変えられなかったがこれでいい。

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