可愛ければ何をしても許される?

水龍園白夜

第1話 捨てられた少女

 私は捨てられた。

 両親は私にソフィアと名付け、三歳になって少し経つとスラム街に捨てた。

 私は何かをした覚えはない、それなのに私は捨てられた。

 両親はお金に困っていたのかもしれない。

 私は、両親が迎えに来る可能性がないと考え周りを見渡した。


 周りは廃墟のような建物が並び、ボロボロで汚い布一枚の服を着ているやせた子供がたくさんいる。

 子供の他にもボロボロで汚い服を着た大人も少しだがいる。

 彼らは先ほど来たばかりで汚れていない長い銀髪や綺麗な服が珍しいのだろう皆私の方を見ている。


 私は周りを見ながらスラム街の奥に進んでいった。

 進んでいくと、一人の大人が数人の子供を怒鳴っていた。


「お前ら、食い物盗んで来いって言っただろうが!」

「お、お店の、人に、気づかれたから……」

「ふざけるな!店の奴に気づかれたからなんだってんだ!殺してでも取って来い!」

「ご、ごめんなさい」


 大人の男は泣きながら謝っている子供たちの一人の首を掴んで持ち上げた。

 

 ああ、ここはそういう場所なんだ。


 周りを見渡して一本の鉄の棒が落ちているのを見つけた私は、鉄の棒を拾って左手に持ち男に近づいた。


「ねえ、そこのお兄さん」

「ああ、なんだクソガキ!」


 男は持ち上げていた子供を投げ捨てて私の方に怒鳴ってきた。

 男は私の姿を見ると、目の色を変え値踏みするような目で見てきた。


「おい、ガキ。その服を脱いで俺によこすなら食い物分けてやるぞ」


 男は卑猥な顔をして笑いながら、私に迫ってきた。


「何言ってるの?あなたは黙った私に食料を渡せばいいの」

「は!?ふざけてんじゃねえぞガキが!」


 男は私の言葉に怒り拳を振りかぶった。


「黙って服を寄こせって言ってるだろ!」


 男はそれだけ言うと、私に拳を振り下ろしてきた。

 先ほど、男に怒鳴られていた子供たちは手で目を隠して見ないようにしていた。

 私は迫る拳を避け、男の突き出してきた腕の肩と両足の太ももと腹を鉄の棒で思いっ切り叩いた。

 男は痛みで地面に這いつくばり、顔だけ挙げて私を睨んできた。


「クソガキ、が、何しやがる」


 男は左手で腹を抑えながら私に怒鳴って来る。

 私は男の頭を靴で踏みつけて地面に叩きつけた。


「何度も言わせないで、食料を持ってきてって言ってるの」

「な、なんで、俺が、そんなこと」


 私は面倒くさそうに軽く息を吐いて、男の頭から足を上げた。

 男は解放されたと思ったのか、悪い顔で笑って体を起こそうとした。

 男が体を起こそうと頭を少し上げたところで、もう一度私は頭を思いっ切り踏みつけた。


「これで最後よ。食料を持ってきて」

「わ、わかりました」


 男が了承したので、頭から足をどけて立てるようにした。

 私が足をどけたため、男は立ち上がりゆっくりとどこかに向かって歩き始めた。


「私は、ここで待ってるから早く持ってきてね」

「分かった」


 男はそういってゆっくり歩いていきある程度の距離離れると、いきなり振り向いて怒鳴りながら石を投げてきた。


「なんて言うと思ったか!」


 私は飛んで来た石を鉄の棒で叩き落とし、男との距離を一瞬で詰めて両足の膝と両手の肘を鉄の棒で叩いた。

 男は声にならない悲鳴を上げて、地面に崩れ落ちた。

 私は男に近づくと、頭を蹴り抜いた。


「大人しく食料を持ってくれば良かったのに」


 男は気を失ったのか何も言わなくなった。


「やり過ぎちゃった。次は壊れないように手加減しないと」


 男が動かなくなってやり過ぎたことを理解した私は、ため息をついて反省した。

 私は先ほど男が怒鳴っていた子供たちの方を向くと、私を見て怯えていた。


「ねえ、あたなたち。私に食べるもの分けてくれない?分けてくれたら、この男みたいな人から守ってあげるよ」


 私がそういうと、子供たちは顔を見合わせて相談し始めた。

 子供たちの代表らしき少年が一歩前に出てきた。


「食べ物を分けたら、本当に私たちのこと守ってくれるの?」

「ええ、私そこそこ強いから守ってあげられるわよ」

「分かった。なら、俺達のアジトまで案内するよ」

「ありがとう」


 代表らしき少年が先頭を歩き他の子供たちがついて行った。

 私も子供たちに後ろについて移動を始めた。





 やっぱりここは、利用できるものは利用していい場所なんだ。

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可愛ければ何をしても許される? 水龍園白夜 @byakuya132

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