第2話 2日目~7日目
見える景色は何も変わらない。
モノクロなこと以外特に変わり映えのない景色に涙がでた。
前の日にどんなことがあっても意外に何もないことに気づいた。
腹が空く。
あれだけ飲んで寝落ちまでしたくせにどうやら体は食べることを欲するらしい。
窓からは日差しがさす、車が走る音、鳥の鳴き声。いつも通りの何もかも。
それら全てを俺は拒む、否定する、嫌悪する。憎い、憎い、憎い。
痛むからだを引きずりそのままベッドに倒れこむ。
何も見たくない、何も聞きたくない。
7時間後、それでも起きた。バイトに行かなくてはならないのだ。
学校に行かなくても落単しても自己責任で済むが、バイトに行かなくては他の人に迷惑をかけてしまう。お金も必要だ。
バイト先ではテンションをあげるように努めた。
塾講のバイトをやっているが同僚はともかく子どもたちは目聡い。
すぐに何かあったと気付いてしまう。バレないためにも普段以上にあげた。
自分の教えている声、書く文字、子供たちの声から自分の笑った顔。
何もかも遠かった。
感覚の乏しいからだは悲鳴をあげたが知らない。その痛みすら今の俺には心地よかった。
何も変化のないバイトが終わった。
あと5回バイトに行ったら彼の通夜をお葬式に行く。現実味が無い。
家に帰り、真夜中の静けさすら否定して俺は今日を終えた。
毎日毎日毎日死んだように生きていた。生きている実感など毛頭わかない。
5.4.3.2.1
心は動かないがそれでも時は進んでいく。
やり切った、達成感はない。
自分は笑っていられたのか。表情筋、仕事してる?
動かない心を動かそうと努力する。
力の入らない手先を必死に動かす。
悲しいかな、手先は簡単に動くのだ。
まるで努力など無駄だと言っているかのように。
嘲笑う。神などいない。運命はある。矛盾もくそもない。
心と身体、現実と理想あるいは夢。有意識と無意識。無色と有色。
全てが離れていく。
俺はそれを止めることができない。
どこまでいっても目に映るのはモノトーンの全てだ。
ああ、明日あいつのお通夜か。
明後日は葬式か。
本当に死んでいるだろうか。
生きているのだろうか。
生きていたのなら言わせてほしい言葉がある。
...........................................................。
だっせぇ。
もうわかっているのに。
もう二度と言えないってわかっているのに。
抗うなよ。現実を受け入れろ。
あいつは死んだ。生きてはいない。
切り替えろ。
心のどこかに残った理性がそう言う。
感情が答える。
うるせえ。
黙ってろ。
知ってるわ。
それでも願う。
願って何が悪い。
カスほどしかない理性は黙ってろ
お前の話は全部終わってから、明後日以降じっくり聞いてやるから黙っとけ。
感情で理性をぶっ飛ばしてから、何も考えないために無理やり目を閉じた。
もう二度と開かないことを願って。
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