流されて

しばらくの痴話喧嘩のあと、戻ってきた。


「…すまない、リサ。突然のことでびっくりしたと思う」

「びっくりっていうか、不可抗力すぎて裁判も起こせない」


どうするんだこれ、いや、魔法が使えるなら逆に就職に有利かもしれない。

などと考えていると。


「ね、そのままリュカと一緒に倒してきちゃったら?」


誰を?


「魔王」


何いってんだこのオバサン…。


「いや、普通に就職したいんですけど」

「な~に言ってるのよもう!ワタシのぼ~だいな!魔法の知識持って就職だなんてもったいない!」

「もったいないも何もいらないんですけど…」

「大丈夫よぉ、減るもんじゃないし」


反論によって私の体力はゴリゴリ削れていくのだが。


「カリン、それはさすがに無理だろう…色々と…」


ため息をついてリュカも反論してくれた。


「でも楽しそうじゃない!?」


ドラゴンがくるりと一回転する。


「倒そうよ、魔王、楽しそう!」

「そうよぉ、今なら冒険者になってお金を稼ぐほうが儲かるわよぉ」


何コレ丸められそう。


「ちょっと待て、いきなりこの1人と1匹を連れて魔王を倒すなんて、無理に決まってるだろ」

「それはあ!行きがけにちゃ~んと訓練していけばいいわよぉ」

「そんな悠長なこと言ってられな」


「お金って」


儲かるんだな、生活できるんだな。


「いくら貰えるんですかね」


じゃあ引き受けてやろうじゃん。

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