魔法なんだから

「魔法なんだから、そんなのどうだってなるじゃないですか。多分ここ、あれですよ、過去に戻ってなんかミッションクリアしたら鍵もらえるやつですよ」

「え…ああ、あ、え?ああ、そうだな?」


ちょっとシリアスも程々にしないと目が痛くなるし。私頭使うの苦手だし。あーあ、でも苦手なんだよな。転生モノで前世の記憶使って云々カンヌンするやつ。もうちょっと勉強しとくんだったな~。全然読んでないけど、アニメとかたまたまみてたら、なんかそういうの多かったし。うん、多分そんなところだろう、とふんだ。あーよかったなー、前世でアニメばっか見ててよかったなー……、て、なんか、でも、あんまり覚えていない。


そういえば、前世の記憶……、と言っても、私はユカという幼馴染がいて、そいつと一緒に幼稚園から、高校まで同じ学校で、ユカなんて勉強ができないから、夏休みの宿題はいっつも私のを見て、帰り道にはいっつもたこ焼きを買って、それで、ドラゴンが現れて、それで、ユカにノートを貸して、それで、掃除機に吸い込まれて。


あれ。


「とにかく、城を目指そう。王様ならなにかわかるかもしれない」

「バカかいおめーは」

「いった!!」


ついビンタしちゃった。身長差20センチ軽く超えてる大男のイケメンビンタしちゃった。思考を妨げられたのと、バカな考えだったものでついうっかり。


「ここ過去なんでしょ?行ったって私のことはおろか、あなたのことも知らないんじゃないの」

「…そ、そうだな、たしかに」

「ここは穏やかに街で情報収集するに限るでしょ。あと、帰る方法探さないと」


カリンにもらった呪文書を開いて、記憶の中に帰る方法がないかを探した。知識をもらったといっても、脳の構造はそう簡単ではない。よく思い出すには引き出しのイメージを、とか言うけど、本当その通り。どの引き出しを開いていいか、まだ私にはまったくわからない。


「じゃあ俺は、聞き込みとかしたらいいか」

「うん…そうだね、そのほうがいいかも」

「アタシは!?アタシなにすればいいー!?」

「口閉じて」


ユカは口を閉じて、空中をくるくる、ゆっくり回り始めた。


「じゃあ、ここで待っててくれ」

「あ!待って、わかった。帰り方」

「本当か!」

「えーと、『来た時に魔法陣を踏んだはずだから、それと同じ魔法陣で帰ればいい…なお魔法陣では個人で作り方は違います。以下カリン・レデフリカ流の時制魔法陣を記載します…』だって」

「使い物にならん」

「捨てるな!」


ポイッと本を投げられたのでローリングしてキャッチした。




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