市場
晴れやかなる市場。栄えている。人は活気づき、様々な種族と人種と身分の人々が買い物をしている。そうだ、ここは。
「ゲーヤ街…」
そう言ったリュカも困惑して、動かない。鎧のせいで、本当に時が止まったよう。それが動いたのは、後ろからの衝突。
「ごめんなさいっ…」
小さな女の子が、たくさんの果物を持って、リュカに衝突。フードをかぶっていて見えなかったが、こちらを見て軽く謝ると、また人混みの中を上手くすり抜けていった。
「こらー!また泥棒して!ザカリー!!」
少女が来た方向から怒声が聞こえた。
「全く…!!」
私達がそれに振り返ったので、目が合ってしまった。どうせだから、話を聞くことにした。お腹もすいたし、その屋台では串焼きが売っていたので。ところで最初のときにユカも同じものを食べていたけどこれ、何の肉?
「あの子、身寄りがないんだ。だからってやっていいことと、悪いことがあるんだけどな」
「…そうなんですか」
店主は困り果てて笑って、リュカはずっと考えている顔だ。
「教会の孤児院でも、手に負えないそうだ」
「これウッマー!!」
小さなドラゴンは屋台の肉を貪っていた。リュカがため息をついて支払った。
「おや、これ」
その金貨を見た店主が言った。
「新しい通貨じゃないか!へえ、現物は初めて見たよ!よっしゃ、ちょっとまけてやろう!」
「…、え?」
新しい通貨。あの王様から渡された通貨?リュカが元から持っていた通貨?そんなに新しいものなのか。彼の顔を見たらそんなのわかる。新しいものじゃない。
リュカはユカのしっぽをつかみ、ちょっと、と言って路地裏に入り込んだ。
「魔法で飛ばされたことは理解できている。そしてここがゲーヤ街だってことも。遠くにあの城も見えた。だからゲーヤ街には間違いない。だが…」
しっぽを強く握りしめ、
「この通貨が流通したのは、もう100年も前だ……」
「………いたい」
ひっくり返ったまま串焼きを食べるドラゴンは小さくつぶやいて、おとなしくなった。
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