あっけない

城に踏み入る。ゾワ、っとした。背筋が伸びて肩が凝りそうだ。

目の前、赤い絨毯が引かれた廊下を突き抜けたところに、赤い大きな扉。魔王がいそうな場所だと思ったが、大きな鍵がかけられている。南京錠タイプで、とても人間の手の届かないところに。


「両側に扉があるだろ」

「ありますね、たくさん」

「このそれぞれの扉の一番奥の部屋に、鍵の欠片がある。それを集めてあそこにぶっ刺すんだ。前回の討伐ではそうだった」


なんとわかりやすい。最終ステージならもっと仕掛けを作るべきなのではないか。


「じゃあ…とりあえず右から行きますか」


全員右手前の部屋から入ることにした。大きな木製の扉で、高さは魔王がいそうなあの扉くらいある。のに、結構すんなりと開いた。少し開いたところで、リュカが前に出てきた。


「俺が行く。何かあると困る」


たしかに。これで開いた瞬間矢が飛んできてワンコイン使いたくないもんね。

ギギ…と開かれると、そこには。



「いらっしゃい、いらっしゃい!!安いよ安いよ!!」


市場が広がっていた。


晴天。


雲ひとつない。


全員がそれを目にした瞬間、あの荘厳な城なんて、どこにもなかった。

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