王様有能

翌日、しっかり朝食をとったあと、カリンのワープで城へ転送した。今度は簡易版ではなく、しっかりとしたものにしてもらった。また民衆に嗅ぎつけられても困るし、気持ち悪くなっても困るし。

なんの体調の変化もなく、転送された場所は、王様らしき人の目の前。どうやら、お食事中のようです。


「だっ、誰だ貴様ら!」


いや近い、近すぎる。

部屋の前の兵士、当然の反応。慌てて王様と私達の間に両脇の二人が入り込む。後ろにいた兵士も王様はただただ、食べかけの肉を落として、びっくりして止まっている。


「あらやだぁ、勇者と魔法使い様よお」

「なっ!?…えっ……、あ…、よく見たらたしかに……」


顔だけの確認でいいの?曖昧すぎない?と逆に警備に不安を覚えてしまう。だが、こんな急に入ってくるのはカリンしかいないとのこと。そして、きちんと魔法対策も万全とのことだった。いやわかるけどさ。


「やっほぉ〜!王様来たわよぉ〜」

「……いつもすみません…」


カリンはめっちゃフランクな感じで、リュカはまた顔を青くしてため息をついて謝っている。小さいまるまる太った王様は


「おお!勇者様魔法使い様〜!いつも登場にはびっくりさせられますぞ〜!」


いつもかよ。そんなサプライズ毎回やってるのか、このおばさん。

リュカはしきりにすみません、すみませんと謝っている。


「あらいいのよぉお礼なんて。それよりぃ」


褒めてないと思う。


「魔物が出始めたし、もう一回魔王討伐しに行こうと思うのです」

「おお、おお…そうであったか……。実はそうなのじゃ、民からも意見が来ていてな。冒険者に頼んではいるのだが、とても処理が追いつかんようで……」


王様は肩を落として、フォークとナイフを置いた。きちんと民衆のことを思う、いい王様なのだな。


「じゃよろしく頼む!」


キュピーン!とこちらにウインクして、また食事をとりはじめた。


「いや軽すぎでしょ王様!!もっとなんかいって!尊厳持って!ていうか私たちにツッコんで!」

「おお、新しいお仲間かの?頑張ってな。あ、これみんなの分の前金で金貨をそれぞれ10000枚渡しておくぞい。」

「もうなんか違う!イメージと違うし!トントン!」

「だってワシ、勇者様のこと信用してるし…」


逆に有能すぎる。騙されたときが怖い、この王様。勢いよくツッコんでしまった私に、リュカは大丈夫だ、と言ってなだめてくれた。

そしてぽん、と渡された小袋には金貨。為替レートわかんないけどたぶん一生寝て暮らせそう。

その後王様と一緒にご飯を食べた。……食べすぎて、気持ち悪くなった。

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