最終章 振り返ってみると
そうして。
離婚してから、一年がたった今。
今振り返ってみると、まあよく結婚したな、私達。そう思いました。
そして思うのは、「旦那も旦那で苦しかったんだろうな」ってことです。
昨今は、旦那さんに対する奥さん方の怒り表現が凄くて、ネットやSNSでもそんな記事やサイトを目にすることが多いのですが、旦那さんが「主婦は楽で良いよな」とか、「お前は気楽で良いよな」と言い放つ背景には、
「夫(男性)は、きちんと稼がないといけない」とか、「男は、強くて逞しくならなければいけない」という強固な固定概念があるような気がします。
けれど。
これ、できる男性って、昔からほんの一部しかおらんだったんじゃなかかな、と私は思います。
稼ぎが良くて、逞しくて、見目麗しく、性格も良く、頭も良い。
―いるわけないじゃん!って冷静に考えればわかるのですが。
でも、それが長らく「理想の男性像」とされてきた価値観の元で、男の人達は、「そんな風になりたい」と思いながら、実際は「なれません」というギャップに苦しんで来たのでしょう。
だからこそ、「家族」の中では「えらい自分でいたい」と言う思いがあって、妻を馬鹿にする発言が出て来るのかもしれません。
まあ……我が家の場合は。
「は? 家事に男も女もあるかっ!」と言う祖母とか。
「このままだと、熟年離婚は覚悟しとってよ!」と言い放つ母とか。身近なサンプルが、
「偉そうに言うなら、働けや(動けや)」と態度で示している人達がいたので、私はどうも幼い頃から、そう言うのには懐疑的と言うか、「何でそぎゃんなっと?」と、「男性が偉い」という空気に疑問を持っていたように思います。(あ、二人は実の親子ではなく、嫁姑の関係です)
実際、子ども相手の仕事をしていると、しっかりしているのは女の子の方だし、優秀な女の子達も沢山います。
男と女どっちが優れている、と言うよりもその人その人の個性や特技を生かしていける社会になって行ければなあ、と思うわけです。
旦那は、自分が「理想の男」になれないことに苦しんでいたみたいです。
けれど、なれないことはわかっていたから、せめて「結婚」することで、「男」としてのプライドを保つことを望んだのでしょう。
でも、その希望は叶えられることはなくて。
まあ、私も叶える気はさらさらなかったですが、価値観の多様化が進んだ現在では、その「プライド」も考えていかなくてはいけないのかもしれません。
「自分の方が偉い」と思うことより、「相手を認め合う」ことが最良だという価値観がもっと広がれば、男の人達も、楽になるのかなーと思ったりします。
後、結婚という制度。めんどくさいなーとも思いました。
苗字を一緒にしなくちゃいけないとか、「離婚は簡単にできない」とか。
離婚すること自体には、手続きは三十分もかかりませんでした。
でも、「離婚するまで」には、本当に時間もかかるし、お金もかかります。
そもそも、「結婚」と言うものが幸福を約束するものであるならば、夫に対する怒りを表出する場が、あれほど賑わうわけないです。
実際、私も旦那との結婚生活は、ほとんど「同居人」あるいは「シェアハウスの住人」と言って良かったです。
そして、「離婚」すると、まるで「悪いこと」のように言われることも変だよなーとは思いました。
別に私が離婚しようがしまいが、「私の」事情です。
赤の他人にあれこれ言われることではありません。って言うか、「うるさい」です。
一緒にいることで、相手を責めることしかできなくなるなら、私は離婚を選びます。
私は、旦那を責めながら生きて行くことだけはしたくありませんでした。
「結婚」は、個人のことなのに、そこに「制度」と言うのが絡んでくるのも、何か変な話だな、とは思います。
これも、多様な価値観が求められる現在では、これから先変わって行くべきものだし、と言うか、「変われや」と切に思います。
「男」とか「女」とか関係なくて、お互いを尊重し、話し合いながらやっていくことがこれからの社会では必要になってくることは間違いないし、色んな選択肢があった方が、結局は子どもも生まれやすくなります。
ま、私の場合は。
一つだけはっきり言えるのは、旧態依然の「結婚」という価値観では、とてもじゃないが、結婚生活は維持できません、ということです。
うん。私の場合は、「無理」でした。
なので、私はこれから先「結婚」することはあっても、法律的な手続きは「もうええわ」と思っています。
まあ、これからどうなるのか。
それは、私にもわからないですが。
この「離婚」をネタにすることだけは、心がけておこう、と思っています。
★★★
『そっか。無事、離婚したのか』
離婚届けを出してから、しばらくして。
私は、離婚したことを竹馬の友に電話で報告しました。
「うん。心配かけたけど、手続き完了しました」
『まあ、しばらくはゆっくり休むと良いよ』
「ありがとう。ただ、何か、脱力感の方が大きくてね。……正直、もうちょっと揉めると覚悟していたから」
『そっか』
竹馬の友は。
ただ、それだけを言いました。
「ただね、元同僚さんが(年下の元同僚さんです)今度結婚することになって、それを報告された時、自然に『おめでとう』って言えたんだ。何か、それが嬉しかった」
けれど、私のこの言葉に。
竹馬の友は、少しだけ笑ったようでした。
『来年は、こっちに帰って来るんだろ? 会えるのば楽しみにしとるわ』
「うん、来年の春には、そっちで働いておるよ」
私はそう言って笑い、竹馬の友の言葉に頷きました。
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