第3話 少女の霊に恐れおののく刑事
廊下へでて右にまがり、ふたつ先の部屋が慰安室だ。
常に薄暗く、事故や事件で亡くなった人が連日運ばれてくる。
この部屋にくるたびに憂鬱な気持ちになってしまう。
ドアを軽くノックして、部屋に入ると、相棒の石原一輝が亡骸のそばに立っていた。
そして、遺族なのか、ひとりの少女が無表情で虚空をみつめながら部屋の隅に佇んでいる。
「……ああ、木下か」
石原が哀しそうな表情でこちらを見る。
「今日、殺された佐藤里奈さんだ。俺たちが捕まえきれずにいるあの、連続殺人者の新しい被害者だ……!」
心底、悔しそうに石原は歯をかみしめながら言う。
警察がすでに捕まえていたら、今日、この日もこの子は笑顔で生活できていたのだ。石原の怒りは木下にもわかる。
木下が手をあわせながら、遺体の確認をしようと、少女の顔を覗きこんで、固まった。
ぎぎぎ、とゆっくりと首をあげ、向かいの壁を見ながら言った。
「…………この子って、双子だったりします?」
「いや? ひとりっこだけど、それがどうした?」
その問いには答えず、木下はひたすら視線を遺体と壁を交互させる。
「なぁ……っ!?」
たっぷりと、時間をかけて脳が現実を理解すると、木下は脱兎のごとく後ろの壁まで後ずさる。
「この子が、死体なら、あそこに立っている子は誰だ!?」
「お、おい。おちつけ。いきなり、どうした?」
今度は石原があわてる番だった。木下と、木下が指をさす方角を交互に見る。
「おちつけって、なんでおちつけるんだ!石原さんにはあの子がみえないんですか?」
「あの子って誰だ?」
どうやら、石原には目の前にいる少女が見えていないらしい。
だとするなら、この子はーーーー
そこへ。
壁に彼女が書いたと思われる字が浮かんだ。
“わたしがみえるんですね”
「はうっ」
あまりの衝撃に耐えきれず、木下は気絶した。
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