第6.5話 カクヨム書き下ろし「白刃さんの好きなケーキ」
今日はとても機嫌が良い日になりました。
美術部の活動が少し長引いて、帰りが遅くなってしまうからご飯は簡単な物で済ませましょう。作り置きもしてありますしと。ほんの少し憂鬱な気分だったのですが。
ほんのささやかな共感で話しかけただけで、大したことをしたつもりは無かったのですが彼には感謝されていたみたいで、お礼に素敵なお菓子をもらえました。
家庭科部の活動で作ったようですが、私の好きなケーキトップ3に入る物でさらに嬉しかったのです。
学校から帰り、制服から着替えて部屋着になり夕食を済ませました。
夜ご飯の味は、あまり覚えていません。なぜなら、ケーキが楽しみすぎて気が向かなかったから。ご飯の量は少なめにして、お腹いっぱいにならない腹八分で抑えます。
お湯を沸かし、アッサム茶葉を取り出し、ポットへ入れてミルクティー用のミルクも用意します。
お皿に彼がくれたケーキを乗せて、フォークを添えます。
帰って来てから一息つけるこのティータイムが、私は大好きです。
温かい紅茶の湯気と共に、アッサムの控えめで心地よい香りが部屋を満たします。
そこへ普段は無い素敵なお茶菓子が付いていて、お茶とケーキが並んでいるテーブルを見て私は心も満たされます。
いただきます。
手を合わせて、これを渡してくれた彼へ感謝を想います。
ガトーショコラの持つ甘すぎない甘さが、私は好きです。ぱくぱくと食べてしまえる程良い味と、しっとりとした独特な食感。美味しい、そう思ってつい笑ってしまいました。
ふふ、いけないいけない。
帰りがけ、「また明日」と言ってくれた彼に私はそっけない返事をしたことをちょっとだけ、後悔していました。
ごめんなさい。その優しさに少しほころばせた顔を向ける方が恥ずかしかったのです。
けど今は一人ですから、ちょっと表情をゆるめても良いですよね。
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