第5話 部活のはじまり
翌日。
放課後を迎えて家庭科部の部室に入ると、もう一人同じ学年の男子を見つけて内心驚いた。
ちなみにうちの高校は全員に「1-A」といった感じで自分の学年とクラスが彫られたピンバッジが配られるため、名前は覚えていないが彼が僕と同じクラスであることを知る。
なかなか塩顔なイケメンで、桜や新緑と共に流れる風みたいな爽やかな雰囲気を感じる。今の季節にぴったりの春風のような男子で、さっそく部の女子達から黄色い声と共に囲まれていた。
美女を見るのも目の保養になるけど、イケメンもイケメンで不思議と目の保養になるな。
女子から囲まれているのは少し羨ましいけど、僕があんな風に囲まれたら緊張で何も話せなくなりそうだから、家庭科部でのアイドルポジションは彼に任せることにした。
距離を置いて見ていたが、僕を視界に捉えると彼はずんずんと歩み寄ってきた。
「やあ御船君! 君も家庭科部なんだね! 男子が俺以外にも居て嬉しいよ!」
ニコニコと太陽みたいな笑顔と共に話しかけられた。
えっ、まぶしい、何だこの爽やかさ。干される、いや違う
「あの、何で名前を……?」
「同じクラスじゃないか! 自己紹介で料理が趣味って言っていたから、もしかしたら家庭科部で一緒になれるかもとは思っていたんだよ!」
「えっ、憶えてくれてたんだ」
「もちろん! さらっと自分の好きな事だけ言ってすっと座る、あのスマートさがカッコいいって思って印象に残っていたんだ!」
あんな愛想のない自己紹介をスマートと言ってくれるのか……。
やっぱり
みんな人の自己紹介よく聞いてるなぁ。
「あっ、一応自己紹介で知ってるとは思うけど俺は『
「わ、分かった。よろしくね、カズ」
ほんと、ごめん。
あの時間は自分の時と白刃さんの時しか頭動いてなくて、全然記憶に残っていなかったから改めて自己紹介してくれてありがとう……今回はしっかり憶えるよ……。
「あ、じゃあ僕のことも遠慮せず
「あきとだな! これからよろしく!」
陽気で軽やかな空気感に圧され、だらりと落としていた僕の右手をカズは両手で握って持ち上げ、力強く握手される。
雰囲気は爽やかだけど独特な熱量とパワーがある、エネルギッシュな男子だ。
男子率的に不安だった部活動は、彼のおかげで気楽に始まりそうだが、結構運が良いなと自分でも思う。新天地でこうもトントン拍子にことが進むと、今度はでかい壁が迫ってきそうで嫌な予感が浮き出てくるのが、僕の悪い癖だな。
そういった良くない不安をクールに割り切って考えられる人になりたいけど、とりあえず今は新しい友人ができたことを喜び、彼と共に部活動に励むのだった。
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