第4話 部活見学
昼休憩が終わり午後は自由に部活動見学の時間となった。
この学校は部活動の種類が多く、
がっつりやるのも良いが、何かしらの部活に入ってのびのびと活動してほしい意図があるようだ。
配られたA4サイズのプリントにずらりと並んで居る部活動の多さが、この学校の売りを物語っている。その中から気になるものにチェックを入れていく。
読書好きとしては気になる部活が二つと、もう一つは一人暮らしで役に立つ家事スキルを学べそうだと考えたから。
「家庭科部に入ればお菓子を食べられる」と同じぐらい
ただ、女の子の割合が高いだろうからそのハードルを越えられるかどうかが一番の問題。
まぁ、とりあえず見学しに行こう。見てからじゃないと分からないことも多いし。
悶々と悩むのをやめ、席を立った。
*
「うちはマンガがたくさん置いてあるから、とりあえず入って読みに来たり入り浸る子が多いよ。幽霊もいっぱい。だから気軽においでー」
マンガ部は茶髪で少しギャル寄りな雰囲気の女子生徒が、手に持っている漫画を読みながらかるーく説明をしてくれた。
「本の感想を語り合う事が多いです。読書感想文ほどきちっとしている必要は無いですがある程度の感想文をお互いに見せ合うこともあります。本好きなら人の感想も聞いてさらに物語への理解が深まり、楽しめるでしょう」
読書部は黒縁眼鏡で長い黒髪、まさに本の虫という風貌の女子生徒が丁寧に説明してくれる。
「男子だ! 男の子全然居ないから入ってくれると嬉しいよ! もちろん力仕事的な意味で!」
家庭科部はおそらく長である女の先輩が朗らかに出迎えてくれる。
男で見学に来たのは僕ぐらいだったとのことで、注目を浴びてしまった。歓迎のされかたは歯に
*
「うーん、悩む……」
一度教室へ戻り、自分の席に座って入部届の紙と睨めっこ。
正直なところ、どこも良さげといった感想。兼部が認められているから三つ入っても良いかもしれないが、最初からあまり手を広めすぎたくもない。
「悩んでいるのですか?」
一人で悩みこんでいたら、白刃さんが後ろから話しかけてきた。
彼女の手には入部届の紙がある。どうやら入る部活は決まっているらしい。
「うん。最初はどこか一つに入りたいんだけど、どこも魅力的でさ」
「悩みますよね、この学校は部活の種類が豊富ですから」
「そうだよね。しかも最初の一歩で躓きたくないからなおさら慎重になっちゃってさ」
「ふむ、あきと君は確か、料理と読書が好きでしたよね?」
自己紹介の時他人が言っていたことを憶えているのか、すごい……。
「うん、そうなんだ」
「でしたら読書部や、マンガ部などに見学へ行かれたのですかね?」
「あ、行ってきたよ! あとは家庭科部にも」
「家庭科部も、ですか」
確認するように復唱した彼女は自分の席へ座り、入部届の紙にペンを走らせる。視線はこちらに向けず、声は僕の方へと。
「個人的な決め方ではあるのですが、私は好きなことでなおかつ『家ではできないことができる』というのを優先して、決めました」
「……なるほど」
「ご参考までに」
その考え方でなら、かなり絞れるな。
「……ありがとう白刃さん。参考になるよ」
「それなら、私も嬉しいです」
さらっと告げ、席を立って彼女は入部届の紙を提出しに行った。その振る舞いから、芯の強い性格であることがわかる。
すぐ決められるのは、物事を判断するのに大事な要点を抑えているからだろう。ああいう冷静な視点は、
僕は彼女の「精神のクールさ」を羨むのだった。
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