第5話天然、傲慢、つまり馬鹿
────困ったわ。
ゼノが怒っていたと思ったら、急にお夕飯の話に変わってしまったわ。
しかも、私のお夕飯だけ蒸かし芋になっているのはどうしてかしら? 理由を聞いても答えてくれないし、正直全く心当たりがないのだけれど……
今日のことかしら? いや、それならさっき謝ったし、サリーにも怒られたわ。ゼノもお夕飯の話をするぐらいだからもう怒っていないのでしょうし。
あ、ウチにはお金がないのかしら? 違うわね、それなら皆のご飯を減らすはず。私だけというのは有り得ないわ。……有り得ないわよね? え? 嫌われてたりしないわよね? 大丈夫よ! 2人とも優しいもの! だからこれはないわ! うん、有り得ないわ!
それに、ウチの教会は国からの支援で成立してるから、お金はむしろある方だものね。
ん〜、だとしたらなに? 今日の事でもない、お金の問題でもない、となると────私、太ってる?
これだわ! ゼノは私の体型を見て太っていると思ったのね! でも違うのよゼノ! これは、座ってるから少し修道服に余裕ができてふっくら見えるだけなの!
教えてあげなければ、このままでは本当に蒸かし芋だけになってしまうわ!
「ゼノ、心配はいりません。むしろ、私は標準より下です」
「これだけ時間を使って、貴女の思考はどこに辿り着いたんですか?」
違ったみたいね。
ならば!
「急にハンカチを振り出してなにしてるんですか?」
「白旗です」
「つまり、降参と? 考えてみたけど蒸かし芋のみにされる理由が見つからないと?」
「はい!」
あらあら、すっごい顔だわ。
「ゼノ? それは怒っているの? それとも、疲れているの? どうゆう心境の顔なのか教えてくれる?」
「どっちもです!」
まぁ、今度はどちらも正解だったのね。
「なんで、そんなに自身に満ちた顔してるんですか? 貴女に対して怒ってるいるんですが?」
私⁈ これは驚いたわね……
まさか私に対してとは、夢にも思わなかったわ。
「はぁ、もういいです。いいですか? 今まで見てきて貴女からは反省の色が伺えません。ですので! これからは実力行使にでたいと思います。その第一歩としてお夕飯を蒸かし芋だけにします! と、いう事です」
反省を? していない? 誰が? 私が?
…………うん、なぜそう思われているのかがすでに分からないわ。
なぜでしょう? よく考えてみましょう。
まず、教会を壊す
次に、サリーやゼノに怒られる
そして、もうしませんと反省して謝罪する
しばらく経って、また壊す
あー、なるほど。私、同じ事を繰り返してその度に怒られているんだわ。当たり前すぎて特に気にしていなかったけれど。
そうゆう事だったのね。つまり、誰が悪いかと言えば…………
あ、これ私が悪いわ。
とりあえず謝ろうかしら。
私も立派な大人ですものね。
「ゼノ、度々の悪行を今、この時をもって全て謝罪致します。身の危険を感じたからといって、確かにやり過ぎな場面がいくつもありました。心の底より、ごめんなさい」
どうよ! これが大人の全力の謝罪よ! 私だってやればできるのです!
さぁ、ゼノ! 今! この瞬間が! 私の罪を洗い流す好機です! 許してごらんなさい!
「分かりました。その謝罪、お受けします」
やった! 勝ったわ! あぁ、神よ、天に座したる世界の秩序よ、あなたの加護を受け、私は今日、ようやく許されました。ありがとー!
「ですが、お夕飯が蒸かし芋のみなのは変わりません」
「なぜに⁈」
「今日は厳しめにすると、サリーと約束したからです」
「…………、ゼノ、ちょっといいですか?」
「ん? どこかへお出かけですか?」
「えぇ、ちょっと神を
「いや、ちょっと待って⁈ なんで神を捌くんですか⁈ あなたシスターなんですけど⁈」
おのれ神め、先程の感謝を
その亡骸をもって償いとさせてあげましょう!
…………神ってどこにいるのかしら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます